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『なめらかな世界と、その敵』 伴名練著 早川書房,2019-08

今回あたりから 2020 年に読んだ本です。相変わらずめちゃくちゃ遅れてるゼ。

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

  • 作者:伴名 練
  • 発売日: 2019/08/20
  • メディア: 単行本
著者の十年ぶりの作品集。同人誌などに細々と書かれ、時に年間 SF 傑作集などに収録された作品を中心に6編が収録されている。いきなり平行世界を自在に行き来する描写があらわれて面食らう表題作「なめらかな世界と、その敵」。平行世界の行き来のカジュアルさと、世界がそうであることの重さのアンバランスさが興味深い。問題意識はイーガンの「ひとりっ子」に通じるところがあるが、個人の中で閉じているところがこの人の持ち味なのかな。「ひかりより速く、ゆるやかに」は書き下ろし。SF では頻繁にと言っていいほど使われているネタではあるけれど、この料理法はよかった。「ホーリーアイアンメイデン」は既読で、初見でも好印象だったけどやはりかなりいい。他の作品と一緒に収められているとまた違った文脈みたいなものが見えてくるのは味わい深かった。
よかったのは上記三編で、残りはそれなりというところだけどどれも印象は悪くなかった。また作品集が出れば読んでみたいと思う程度には好き。