- 作者:ヤン=ヴェルナー・ミュラー
- 発売日: 2017/04/19
- メディア: 単行本
ポピュリズムとは何か。わかるようでわからない言葉で、なんとなく大衆迎合主義の人気取りに腐心する風見鶏的政治家、みたいなイメージがあるが筆者の定義ではどうもそういうものではないらしい。各国に見られるポピュリストの共通して取る戦術と、そこに見られる主張から逆にポピュリストを定義し直してみせる。なにかちょっと循環論法めいているが、こういう概念はそのようにしか定義できないだろう。
ポピュリスト指導者が掲げるのは反多元主義、反リベラルで、マイノリティを排斥することで一体感を醸成し、リベラルは国賊的な存在であると見なし、自分たちこそが正しく国民を代表する存在であると主張する。もちろんそうではない、民主主義であれば選挙によって選ばれた者こそが国民の代表でなければならない。だけどこの主張はそれなりに機能する。
著者によれば、やはり人々の暮らしが苦しくなってくるとそういう主張が賛同を得やすくなるのだというが、民主主義が曲がりなりにもそこそこ根づいてからこっち、どこの国でも常に民衆の暮らし向きがよくなってたかっつーとそんなはずもないわけで、まあ実際昔からポピュリストはしばしば幅を効かせてるわけだが、民主主義の疲弊というか人々の民主主義への倦みみたいなものはあるんじゃないかという気がした。(これはざっくりしすぎた感想)
あとちょっと気になったのは、本書に出てくるポピュリスト政権の特徴みたいなのが、ちょいちょい本朝の現政権にあてはまるところ。たとえば身内に対する恩寵を用いるところとか、都合のいいようにルールや解釈を変更するところとか。それで現政権がポピュリスト政権だということには全然ならないけど、でもそんなこと当てはまらないでほしいよな。
短いけど、なにか心にひっかかるところの多い本でした。ポピュリストに興味ある人にはおすすめ、かも。