- 作者:デヴィッド・グレーバー
- 発売日: 2020/07/30
- メディア: 単行本
特に気にかかったのは、人はブルシット・ジョブを続けることには耐えられないんじゃないか、という仮説。やってもやらなくてもいい仕事で、分量も少なくて、給料はそれなりにもらえて、といううわべだけ聞いているとうらやましいようなポジションなのに、そういう仕事から自ら離れていく人は多いのだという。なるほどそういう側面はありそうで、わからないでもない。でもおれにはこれは丸ごとは信じられない。確かにそういう人はいるのだろう、それは認める。だけど別に平気な人もけっこういるんじゃないだろうか。そして平気な人はわざわざそんなこと言わないだろう。とはいえ「耐えられない人がそれなりの数いる」ということが言えれば充分なのかもしれない。
あともうひとつ印象に残った仮説は、ブルシットではない仕事であればあるほど給料が低い(例外は医者)、というもので、これは与太に近いかなと思うけど、コロナ禍で注目されたいわゆる「エッセンシャル・ワーカー」に比較的低所得の業種が多かった時に感じた気持ちと似たものを感じた。
それで、ひるがえって自分の仕事はどうか。少なくとも今やってる仕事の何割かは確実にブルシットだと思う。上でいう「ブルシット・ジョブを支える普通の仕事」も含めればもっと増えるはずだ。しかし全部が全部典型的なブルシット・ジョブというわけでもないように思う。ホワイトカラーにはこういう人は多いんじゃないかな。で、おれとしてはまあ仕事なんてそんなもんだという感じでやっている。そういう人も多いんじゃないだろうか。だとするとこの世からブルシット・ジョブを無くすのは、たぶん極めて難しいよな。というか、こんな風に混ざりあって、絡み合って遍在していて、それをほどくことは実質的に不可能だ。
それでもなお、自分の関わる仕事のうちいくつかのものは、切り分け可能なブルシット・ジョブであったりもする。それに対してどうにかできないかと考えることは、たぶん無駄ではないだろう。その視点を持てたことはよかったかな。(視点持つだけじゃだめなんだろうけど)