黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

『ディズニー CEO が実践する 10 の原則』 ロバート・アイガー著/関美和訳 早川書房,2020-04-04

ディズニーCEOが実践する10の原則

ディズニーCEOが実践する10の原則

このタイトルは明らかにミスリード。内容に即したタイトルをつけるとするなら「僕の出世録と、ディズニー CEO になってから成功させた買収の裏話あれこれ」になると思う。原題は "The Ride of a Lifetime" らしく、ううむ、確かに売れなさそうなタイトルではあるのだが、でもあからさまにビジネス書と誤認させるタイトルをつける手口は好きになれない。
上で書いたとおりの本で、著者がテレビ業界の下働きからのし上がっていってついにはディズニーの CEO になり、その時期にディズニーはピクサーやらマーベルやらを買収してどんどん大きくなっていくんだけど、中の人が書いているので普通になかなか面白くはある。マーベルの当時のボスはめちゃくちゃケチだったとか、ジョブズは確かに変わり者だったけどいいやつだったとか(しまいには相当仲よくなったらしい)。著者がジョブズに「これからは絶対コンテンツが大事だぜ。動画の配信サービスやろうぜ」てなことを持ちかけたら数週間後に iPod touch の原型みたいなやつを持ってジョブズが訪ねてきて、「おれも同じことを考えてたんだ」って言われるところとかは率直にわくわくした(ネタバレ)。
というわけでこういうの好きな人には面白いと思うけど、そこまで好きかといわれるとそうでもないので、面白かった以上の感想はあまりない。一応「10 の原則」は本の前半に出てくるんだけど、それがこの本の主題というわけでもないのでなるほどねーという感じ。今原題調べてたらビル・ゲイツが「2020 年夏の五冊」みたいなのに選んだとかでちょっと話題になったらしいけど、ゲイツとは好みが合わなさそうだ。面白かった、でも全体としては not for me かなあ。当たり前だけど、世に面白いものはめちゃくちゃたくさんあるので、もはや単に面白いだけでは時間を費やすに値するとは言い切れず、たとえば読書なら読書に(おれが)求める種類の面白さというのがあって、それとは少し違う、という感じ。