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赤い公園 THE LAST LIVE "THE PARK" 於中野サンプラザホール

赤い公園の解散ライヴ。
津野米咲がこの世を去り、残された三人が出した結論は「津野米咲のいない赤い公園赤い公園ではない」だった。だから、最後にライヴを一回だけやって解散する。三人が達した結論なら異論はない。ひょんなことから現地で見られることになり、最初で最後のライヴ参戦となるこの日を迎えた。楽しみでもあり寂しくもあり、しかしどちらかと言えばひさびさのライヴにわくわくしながら開演を迎えた。
メジャーデビュー二枚目のミニアルバムに収録されている「ランドリー」からというマニアックな立ち上がり。そこから「消えない」「ジャンキー」「Mutant」とたたみかけて、次にやってくれたのが「紺に花」だった。これまでライヴで一度もやっていない曲だが個人的にはめちゃくちゃ好きな曲で、石野さんのパフォーマンスも最高だった。サビのところで、おそらく花びらに見立てて手首をくるくると回す振りが素晴らしく、ああこれが見られて、聴けてよかったと心底思った。
三人とも、そしてサポートの三人も含めて、ほんとうに楽しそうに演奏していた。しんみりなんかしてたまるもんかと言わんばかりだった。
ちょうど真ん中ごろに演じた「pray」が一番ぐっと来たかもしれない。津野さんがまるで将来を予見して書いたかのような曲。観客も静まりかえって聴いていた。祈る気持ち。きみの旅がどうか美しくありますように。その言葉をそっくり三人に贈りたかった。疫病のせいで一緒に歌うことはできなかったけど。
途中三人だけで三曲やった。ユニット名どうしようか? え、全然考えてなかった、といつも通りぐだぐだになりかかりつつ、石野さんがいまぱっと思いついたのでといって「さんこいち」を提案。三個一ってそんなぱっと思いつくような言葉だろか。「衛星」「Highway Cabriolet」「Yo-Ho」と披露したけどどれもよくて、いやあ、三人でも充分やれるんじゃないの、と思わずにはいられなかった。
このあとはツインギターによる五曲入りメドレーという今回のメンバーならではの企画があり、「KOIKI」「NOW ON AIR」と佐藤さん時代のキラーチューン二連発。石野さんがいずれの曲もしっかり手に入れていて、大変盛り上がった。「NOW ON AIR!!」って、一度でいいから叫んでみたかったな。
メンバーひとりひとりから最後の挨拶があった。藤本さんは最後まで不思議トークを炸裂させていてぶれないなと思った。歌川さんは感極まっていたけど、この状況で泣かないほうがむずかしいだろう。石野さんは本当に立派だった。ヴォーカルというバンドの顔が変わったことに申し訳なさを感じていたということ、だいぶ歳若い自分を三人がまったく自然に受け入れてくれて、おたがいリスペクトしあえる関係でいようねと言って始まって、ずっとそうしてこれたこと、東京ドームという目標にとどかなくて終わることは残念だけれど、でもファンの皆さんの日常と共にある音楽として聴かれるというのは本当にすごいことなのだと思うということ。そんなことを話してくれた。
そして最後に「オレンジ」が披露された。おれが赤い公園を好きになった曲。やっぱり素晴らしい曲で、最後に生で聴けてよかった。藤本さんのベースも、歌川さんのドラムもほんとうにすごくて、よかった。
そのあとアンコールで「KILT OF MANTRA」「黄色い花」「凛々爛々」と三曲やって、ほんとうにおしまい。凛々爛々であがりまくって終わったのはよかったな。最後三人で真ん中の狭いお立ち台にぎゅうぎゅう乗っかって「ありがとうございました!」っておじぎして、そのあとはけていくときに石野さんが「解散! みんな解散!」って笑いながら言ってて、きっと三人はもう前を向いてるんだなって思った。

ほんとうに素晴らしいライヴで、だからこそ、残念、もったいない、っていう気持ちが本当に強い。それはもうどうしようもないことだとわかっているけど、でも三人がこれだけのパフォーマンスをできるんだって肌身で感じてしまうと、諦めのつかなさが残ってしまう。上では異論はないと書いたけど……正直やりきりなさは残る。
でもきっと、これだけの能力を持つ三人だから、それぞれにこれからも音楽に関わっていくことだろう。その歌声に、ベースに、ドラムに、そのうちに触れることができるだろう。赤い公園の音楽もずっと残るし、おれはそれを聴き続けて、語り続けることができる。三人の未来に幸あれ。またいつかどこかで会えますように。