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日本SF作家クラブ編『地球へのSF』 早川書房(ハヤカワ文庫JA),2024-05-22

日本SF作家クラブによる、書き下ろしSFアンソロジーの四回目。ポストコロナ、2084年、AI、と来て四冊目「地球」はさすがにテーマゆるふわ過ぎんか、とは思うし前書きにもそう書かれているが、結果的にそれなりにまとまっているという印象を受けたので悪くないテーマだったのかもしれない。
注目は異星生物生態SFマイスターの春暮康一「竜は災いに棲みつく」。地球がテーマでこの人が何を書くのだ…?と思ったが地球惑星物理学を全力で振り回して異形の「生物」を描くという力業を繰り出してきて、これはよかった。もっと長いやつを読みたいと思ったので短編としては成功であろう。逆に言うと力業が過ぎてこれを長編に拡張するにはかなりのカロリーが要りそうにも思うので、短編ならではの作品だったかもしれない。
琴柱遥「フラワーガール北極へ行く」は人間がユートピアメタバースに入り浸るようになった未来に、リアル世界でシロクマとクジラの結婚式が執り行われる話。わちゃわちゃしてるんだけど今ならではのモチーフやテーマが盛り込まれていて、総じて明るくて楽しかった。この人の他の作品も読んでみたい。
円城塔「独我地理学」。村に生まれたふたりの変わり者が作中世界の地球の構造の謎に挑む掌編。奇想は作者にしては大人しく語り口も平易だが、まぎれもなく円城節だし抒情にあふれている。終盤にふいに繰り出されるスタンの科白のキュートさと言ったらない。こういうのを書けるのか。
全体では若い作家が増えている印象ながらヴェテランもみな元気で、ずば抜けたものはなかったけど水準が高く、書き下ろしアンソロジーとしては質が高いと感じた。すっかりSFも追わなくなって久しいので、これを足がかりにまたちょっとずつ手を伸ばせたらと思う。

ところでハヤカワオンラインのこの本のページ、どう見ても著者が22人いないんだがなんなんだ。順番もめちゃくちゃだし意味がわからない。紹介文も短すぎる。せっかく続いてるシリーズなんだしいい本なんだから気合い入れてほしい。かなしいぜ。
(と書いていたのだが、今般(2026-01-06)見たら直っていた。紹介文はどの本もこんなもんらしいのでこの本がことさら気合が入っていないわけではないが、それはそれとしてもう少し頑張ってほしいとは思う。)
https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000614548/