黄昏通信社跡地処分推進室

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宮内悠介『暗号の子』 文藝春秋,2024-12-05

テクノロジーものを集めたノンシリーズの短編集で、ここ7年ぐらいの8作品が収められている。表題作は中編で、テクノロジーと人間の特性、社会と小さなコミュニティと個人の相互作用、その中で必死にもがく主人公が描かれる。主人公のキャラクターも、その書かれ方も、禍福がぱたりぱたりと積み重なるような展開も、どこか危うく、諦念が混じり、痛々しい。それでも前向きさが失われず、熱量の少ない主人公が足を進め続けるのがなんかいいのだ。鮮やかとは言いづらいちょっとごつごつした感じも著者らしくてよい。
巻末「ペイル・ブルー・ドット」は宇宙開発ベンチャーに勤める主人公と宇宙好きの少年の交流を描く。その裏で主人公とメールを交わし続けている後輩が物語に関わってくるところが、そう来なくっちゃ、という感じでいいんだけど、最後は若干ご都合っぽい印象もあった。とはいえこれも好き。
複数の作品に登場する、インターネットの世界が利用者の精神に影響を与えるというアイデアはちょうど個人的にもうっすら実感のあるところで興味深い(デトックス!)。新しいテーマではないが何度も問い直されるべき命題なのだろうと思う。
著者の作品の中でもひときわ現実との地続き感が強い作品群で、個人的には好みの作品集だった。満足。

あとがきで小説は18冊目と書いていて、そんなに、と驚いてしまった。リストを見ると最初の6冊中5冊は読んでいて、その頃まではおれもまだ本を読んでいたということなのだろう。かなり未読の作品があるので、ぼちぼち読んでいきたい。
(と書いたが案の定このあと一冊も読んでいない……。2026-01-15)