黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

『神様のメモ帳2』 杉井光 電撃文庫,2007 

前作の感想はこちら→http://d.hatena.ne.jp/natroun/20070302#p1
ということで第2巻。今回は2億円の入ったボストンバッグを持った女の子がいきなり現れて「お父さんを助けて」という話。「探偵事務所に依頼人が現れて、その依頼に従って探偵とその助手である主人公が動く」というフォーマットだけ取ればまっとうな探偵ものみたいではある。実際前作に比べると登場人物が固まったためか全体的に話の筋が安定していて読みやすかった。これは感覚的だけど、前作はどうも全体の構造が危なっかしい感じがした。多分学園もの部分とミステリ部分との融合が上手くいってなかったんじゃないかと思う。
イデアも前作より大ごとになっているのだが、ほどよくはったりが利いていて中々読ませる。少し主人公がうじうじしてる期間が長過ぎるのがいらいらするけど、その分カタルシスも大きくなってるのでなんとか許容範囲だろう。中々人は急には変われないし、同じようなことで何度も悩むものなのだし。
クライマックスで主人公はある作戦を思いつき、仲間たちの協力でどうにか実行して成功させる。それが(法律的あるいは道徳的に)正しいことなのかどうかは疑問が残る。というか多分ある面ではアウトだろう。でも世の中の多くのことは曖昧で色々絡み合っていてばっさりとは切り離せないし、角度によってありかなしかも違ってくる。判断てのは最終的には自分の側からしか下せない。
だから、これでいい。
ラストシーンを見る限りでは少なくとも次までは続きそうな気配ではある。早いのか遅いのかわからないが、1巻の重版も決まったという。3巻が出ることを期待したい。