黄昏通信社跡地処分推進室

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山麓・二日目

起きて朝ごはん。コンビニで朝ごはん買うときはミックスサンド系を買いがちで、この日もそうした。あとはデニッシュっぽいやつと、野菜&くだものかなんかだったかな。この日は庭仕事で、草や木の枝をざくざく刈ったり、昨日買ってきた苗を植えたり。堆肥を作るためのブルーシートの上にミミズがたくさん乗ってて、めくるとき慌てふためいていた。一通り終わったところで 11 時ぐらいだったのでじゃあお昼食べに行こうかねーそれとも買ってこようかと言っていたら息子がバーベキューがよかったと言ってついには泣き出してしまう。うーむしかし全部はできないしさあ、そもそも炭もないんだよね、じゃあ肉だけでも買ってきてコンロで焼こうか、などと言っていたら義兄が炭を買ってくるからやろうと言ってくれる。ならばやるか!ということになり急転直下、義兄に炭をお願いしておれたちは息子を連れてグルメシチーに行き野菜や肉を買い込んで(メモ:ソーセージ 500g と肉 800g ぐらい)、急遽 BBQ が開催されることとあいなった。義兄の買ってきてくれた炭は練炭みたいなやつで、並べて直接火をつければそれだけでいいというお手軽なやつ。それを並べてどんどん火をつけて、どんどん焼く。最初温まるまで時間がかかるのでどんどん追加してとうとう一箱ぶん全部並べちゃったんだけど最終的にはいささかやりすぎだったことがわかった。たぶん 21 個ぐらいがよさそう。食材の量はちょうどよくて、みんなお腹いっぱい食べられたしほとんど余らなかった。というわけで終わったところで撤収。ひさびさに来たけど、そんなに特別なことしなかったのにめちゃくちゃ楽しくて、なんだかんだ言って出かけるのってそれだけで楽しいんだなと思った。おれは自分が外出しなくても平気な質だと思っていて実際けっこうそうなんだけど、それでもこの三ヶ月というのはやっぱりちょっとつまんなかったんだなーというのを今更ながらに自覚した。帰りの電車も、いつもよりずいぶん空いていた。

山麓

ひさしぶりに山麓へ。記録に残っている限り 11 月以来で、おそらくみんなで行くのは実際それ以来と思われる。いつもの電車に乗るが普段より明らかに空いていて楽々座れた。まだ自粛ムードは去っていないようだ。着いてから荷物を置いてパン屋さんへ。ここはいつも賑わっていて、この日もお客さんは多く、おれたちが入った直後に入場制限がかかっていた。パンを買い込み公園へ。11時半ぐらいだったが先にプールに入ってしまうことにする。入場時に全員分の住所と名前を書かされてかなりものものしいが、それ以外は通常営業とあまり差はなかった。ただロッカーは三列に一列しか使えなくなっていて、おそらくはここも客が多ければ入場制限するのだろう。おれはプールに入るときまでマスクを着けっぱなしで行ってしまいマスクが濡れた。ふぎー。さらに水中眼鏡を着けようと思ってぐっと引っ張ったらレンズ部分のブラケットが割れてしまい、いきなり着用できなくなってしまった。ぐぬぬ。ともあれ適当に泳いだり遊んだりする。ほとんど遊んでたかな。休憩のタイミングで入って、次の休憩までだったのでちょうど 50 分。気持ちよかった。外に出て木陰でお昼ごはん。チリコンカーンとパストラミカスクルート、がっつり目のやつふたつにしたけどわりとちょうどよかった。んで子供たちが遊具でさんざん遊んでから公園を出て、コメリでメダカと花の苗を買いこんで帰る。山麓に戻ってメダカを裏の小さな水たまりみたいなところに放流し、荷造りして温泉へ。残念ながらレストランはやってなかったものの、元どおりの賑わいで、まあ、よかったと言えるのか。欲場に入るときもまたマスク忘れてて着けたまま入っちゃったのは今日のハイライトだった。いちおうひとつおきにシャワーのホースが外してあって、ソーシャルディスタンスということらしいが、風呂場で危ないのは脱衣所だと思う。ともあれ出てから餃子屋さんへ。初めて行ったけど値段の割にボリュームがあっておいしかった。忘れがちだけど学生街なんだよな。そのあといつも通りローソンに寄って、明日の朝ごはんとかアイスとか買って、花火やって寝る。子供たちがだいぶ花火上手になってありがたい。

ばたばたと

仕事忙しい……というほどではないのだけど(分量的にはそうでもない)、急な仕事&けっこう重要な位置付けの会議というのがあり、なかなか気疲れする日々。
この日は夕方社長室に入る。10 人ぐらい入ってて笑いそうになる。いくら広いっつっても三密そのものじゃろこれ。社長は終止ご機嫌であった。まあそうだろうな。

父の誕生日

というわけで父に電話してみたが、詳細は省くが優雅な仕事ぶりで笑ってしまった。まあ、本人のこれまでの人生を振りかえればもう全然そんな扱いに値すると思うのだけど、それにしてもすごい。ともあれいいペースになりつつあるみたいなので、この調子で本人の働きたい間はゆるゆる働いてもらえれば。

たろう脱皮

というわけでたろうがまた脱皮した。一回見逃したのか、最近片手の方が身体が大きいように思われるのだが、これでまた同じぐらいになるかな。先日説明したメカニズムのため、脱皮してすぐは元の大きさとほとんど変わらないので、一日二日してから真の大きさがわかる、という感じ。ここまで来たのは実際我が家の中ですら 2/9 だったわけだが、それでもまだ体長が大人の小指にも届かないぐらいなのでまあ大変なもんだなと思う。ほとんど死ぬよね、これ。

『息吹』 テッド・チャン著/大森望訳 早川書房,2019-12

息吹

息吹

真打ち登場。『あなたの人生の物語』以来 17 年ぶりとなる著者の二冊目の作品集で、九編の中短編が収められている。ちなみにデビューが 1990 年の「バビロンの塔」らしいので 29 年で二冊ということになる。いろいろな意味ですごいペースだ。
「商人と錬金術師の門」は既読……のはず。アラビアン・ナイト的世界を下敷きに、時を越えられる門と、それにまつわる三つの物語を描くやや長めの短編。タイムトラベルものは歴史改変が大きなテーマになることが多く、「いかに改変するか」(この場合はさまざまな形で改変が阻まれることが多い)もしくは「いかに改変しないか」(見に行くのが目的で、歴史を変えてはならないという制約)に焦点が置かれることが多いが、この話はちょっと違ったところに着目して語っている。なるほどそういう変え方もあるかというかんじで中々よかった。
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は AI の成長を描く物語なのだけど、たっぷりページを使ってそのために何が必要になるかを描いている、本格的な SF だ。他の存在と相互作用しながら自律的に成長するような AI が実用化されようとしつつある近未来。ただし、AI を走らせるためにはもちろん専用の環境が必要になる。いくつかの競合する会社がそれぞれ独自のプラットフォームと AI を作るが、時が経つにつれてだんだん商業的な優劣がはっきりしてくると、やがて諦めて環境ごと AI 事業から撤退する会社があらわれる。人間が創り出した知性をなんらかの being であると捉えるなら、それに対しての倫理的な責任からは逃げて通れないように思われるが、実際には(おそらく)人間はあっさり経済的な判断を下してしまう。その辺りの機微とグラデーションを実にていねいに描いていてとてもよかった。
「偽りのない事実、偽りのない気持ち」はライフログがテーマ。人生の記録がもっと高い精度で残せたらどうなるだろうか、というシンプルなテーマだけど、こういう風に掘ってくるのはわりと新しい視点かもしれない。にもかかわらず誰もが思い当たるふしはあるだろう。人によってはなかなかきついかもしれないストーリーだけど、逃げずに書いていてすごみがあった。まだ他人事として読んでいるから平気だけど、本当に実現して自分で見られるようになったら死んでしまうかもしれない。
「不安は自由のめまい」は SF らしい面白い設定から想像を広げた中編。平行世界と通信できるタブレットのような機器が発明され、ひとびとは自分の世界に近いが少しだけ違う世界との通信を楽しむようになっていた。機器ごとに接続先は違い、この世界と違う部分もどこも少しずつ違っている。また通信量にも限界があって、テキストメッセージならそこそこやりとりできるけど動画だとそんなに長時間はできない、みたいな感じ。しかし往往にして人は平行世界の自分をねたむようになってしまい、なぜ自分がそちらではなかったのかと考え出すようになってしまう。そのような人たちが集まって話をする集会(AA みたいなかんじ)があって……なんてのはいかにもアメリカらしい設定かな。主人公はその機器の中古品を扱う会社につとめながら、プライベートでは集会にも参加していて、ちょっとしたことから同僚が発案したやばい仕事に巻き込まれていく、というけっこう盛りだくさんな設定で、これももしかすると人によってはきついかもしれない。個人的にはこういうの読む時自分を棚に上げられちゃう質なので普通に楽しめた。
「息吹」は既読(そのとき書いた感想)なのだけど、やはり圧倒的に素晴らしい。登場する世界はどうもおれたちの世界とは大きく違っているようで、そこの人たちは圧縮空気を動力として動いているらしい。交換可能な「肺」を吸気所で一日一回満タンのものに交換し、時間があれば取り出した空の(正確には外気圧と同じ圧になってしまった=動力を供給できなくなった)肺に空気を充填して置いておく。主人公は自分たちの思考や記憶がなにに支えられているのかに疑問を抱き、それをつきとめるための実験を始める。そこから明かされる事実と洞察がすごい。美しくてはかなくて繊細で、読みながら思わず「どうしておれはこういう存在じゃなかったんだろう」と考えてしまうほどだった。二十頁ほどの短い作品だが、世界をまるごと内包しているような豊潤さと、静かに心をうつ叙情性があって、もう読むの四回目ぐらいだけどめちゃくちゃよかった。
他「オムファロス」「デイシー式全自動ナニー」「予期される未来」「大いなる沈黙」を収録。文句なしに面白いので、全人類に読んでほしい。