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ストレートという変化球

先日マリーンズの成瀬がちょっとだけ NHK のニュースで取り上げられていた。知らない人のために書いておくと、球速は 140km/h に届くか届かないかだが驚くほど“伸びる”ストレートを投じることで知られている投手だ。成瀬はボールをリリースする瞬間に「指先でパシッというかパンッというか、弾く感じで」放しているという。それほどまでに回転をかけて、ようやくあの伸びが実現するのだろう。プロとしては速いとは到底言い難いストレートの下を打者のバットが空振りする様は実に小気味いい。ストレートの伸びというのはテレビ中継で見る時が一番よく感じられるので、テレビ中継があれば是非観て欲しい、ってないですけど中継。プレーオフ進んだらあるんじゃないかなー。
おおきく振りかぶって』の冒頭に、「ストレートってのは変化球なんだよ」という科白が出てくる。バックスピンを目一杯かけて、落ちながら飛んで行くボールの落差を小さくするわけだから、「上方向に変化する球」とは言えるかも知れない。でも、ストレートの浮揚感というのはやはり他の方向の変化球とは一線を画していると思う。重力という逃れられない力に、それでも精一杯抗おうとするからだろうか。
成瀬は冒頭のニュースの中で「だから指は消耗品という感じがする」というようなことを言っていた(と思う)。いつまであのストレートを投げることができるのか、本人を含めて誰にもわからないのだ。指先をすり減らしながら投じられる、重力に逆らう球。俗称は、まっすぐ。