黄昏通信社跡地処分推進室

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『歩いても 歩いても』 是枝裕和監督,2008

実家に行った時に母に勧められたので観に行ってみた。面白かった。が、中々怖い映画だったなあとも思う。
阿部寛演じる次男が再婚した妻とその連れ子と共に帰省し、年老いた両親と、姉一家と一日を過ごす。その一日を描いただけの映画なのだけど、家の古び具合やちょっとした会話や登場する料理がやたらリアルなのだ。そして登場する役者がとにかくみんな上手いし役にはまっている。子役の上手さには妻ともども驚いてしまった。あんな風にできるものか。
家族同士って、家族同士だからこそ見栄を張ったり、隠し事をしたり、つまらないことにこだわったりしてしまうところはあると思う。逆にそういうことが怖かったりめんどくさかったりして距離を置いてしまったりとか。そんな中で、それぞれの思惑とか本音とか悪意とかが、たった一日の会話を通して見え隠れする。その感じが傍観者としては面白くもあるし、まるで無縁ではあり得ないこととして恐ろしくもある。
樹木希林が圧巻のうまさで、老いを隠せない一見善良そうだけど腹に抱えてるものが色々ある母親の役を、しかしどこか剽軽な感じで演じている。面白いシーンではもう何を言っても可笑しいし、「それぐらいしたってバチは当たんないでしょう」の恐ろしさや、黄色い蝶を追うシーンに顕われる妄執は実に迫力があった。全く素晴らしい役者だと思う。