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『キャットルーキー』 丹羽啓介 全26巻 小学館 1994-2003

20巻ぐらいまでは全部持ってたけどそこからは追い切れずに、このたび漫画喫茶で読了。面白かった、が、流石に第二部に比べると第三部の方が落ちるのは否めない。*1
この漫画は基本的にはもの凄くオーソドックスな野球漫画で、もちろん漫画的な人外はばんばん出てくるんだけど、試合のターニングポイントになるプレイには、できるだけ野球としての面白さを盛り込もうとしていたと思う。例えばハッチ・ボーンズが初登場する試合で、塁に出たハッチが散々かき回す場面なんかは、野球の常識には反するけれど説得力があって凄く面白かった。
それと、月刊誌で連載をする上では重要なことだと思うんだが、端折るところとしっかり描くところの見極めが結構上手い。一試合の間でもそうだし、ペナントレースの間でも然り。実在の選手がモデルになっている選手が多いだけに、どうしても現実のシーズンとのずれが出てくるのは辛いところだったが、それでもわりと上手く処理できていたと思う。だからこそ、第二部終盤でパ・リーグの他球団とひとまわり当たる流れが凄く盛り上がったし、そこに盛り込む野球ねたも上手く残せていたのだろう。
そこから最後までテンション上がったまま完結した第二部に比べると、ねたの枯渇が目についた第三部はやはり辛かった。主人公がバッテリー、しかも変化球投手と頭脳派捕手という組み合わせから、どうしても「魔球漫画」に近い方向性になってしまったことも、前二部との差別化をはかる上では有効だったが、この漫画の肝である「野球そのものの面白さ」からは少し離れていってしまう結果になったのかなあ、という気はする。
まあともあれ好きな作品ではあった。サンデー増刊の方針転換と共にやや中途半端に終わってしまった感はあるが、次の作品があれば読んでみたい。

*1:第二部に比べると……否めない:第一部は原型の読み切りと、おそらく本連載前の短期連載で構成されているので、そもそも別の捉え方をするべきだろう。