黄昏通信社跡地処分推進室

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『サナギさん』 施川ユウキ 少年チャンピオンコミックス,2005 ISBN:4253210112

施川ユウキは完全に自分の形をつかんだな、と思う。自分で書いているように「大喜利的なネタ」こそをもっとも得意にしていて、文字だけでもかなり面白い物を作れる質なのだが、それでも映像が伴う方が面白くなるねたもあるし、あるいは「間」を作り出す上で漫画という形式がプラスに働いている部分もある。前作の『がんばれ酢めし疑獄!』では登場人物を完全には固定せずに何人かの「常連」的キャラクターにねたをやらせる形式で、それはそれで柔軟な面白さを提供できる形ではあった。だが、常連も少しずつ入れ替わっていたし、一方でねたの面白さが常連の(特異な)キャラクターに依存してしまう場面があった。それは敷居の高さにもマンネリにもつながる要素で、作者は多分避けたかったのだろう。今作では可能な限り登場人物を少なくしていて、その中ではまる範囲だけでねたを展開している。それは簡単なことではないだろうし、週刊では常にねたの枯渇との戦いになるだろうが、それでもここまで一定の水準を保っている。驚異的と言ってもいいのではないだろうか。