黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

『海を見る人』 小林泰三 ハヤカワ文庫JA,2005 ISBN:4150307970

短編集。2002 年にJコレクションで出てたのが文庫に落ちたもの。
感想をごく大雑把に言えば「理屈っぽい梶尾真治(←雑学四文字)」とでもなろうか。特に表題作はまさにそんなイメージ。この短編集に収録されているのは、科学的なワンアイディアを基に世界を構築して、その世界の上で物語を展開している作品が多いように見受けられる。物語そのものは作者自身も認めるように恋愛ものが多くむしろ叙情的で、そのギャップが中々いい。
ただ、欲を言えば世界の設定と物語の展開がもう少し噛み合っていればなあ、というところで、上で中々いいとか書いておいてなんだが、個人的にはそういう方が好み。その上である種の叙情性を与えることは可能だと思うのですよ。かなりぜいたくな注文になってしまうけど。