黄昏通信社跡地処分推進室

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有名な『ニューロマンサー』の冒頭の一節、「港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった」の空の色を真っ青といったファンがいたのには、けなした当のマーティンまでが唖然としていた。
ありきたりな感想だが、表現というのはなんにせよ古びてしまうものなのだなあ、と。今のテレビは「空きチャンネルに合わせ」ても入力に一定以上のコントラストがある信号が入って来なければ受信不能と見做して真青な画面を映し出すものがある(多い?)から、そのファンはそれを想起したのだろう。マーティンが唖然とした気持ちはものすごくよくわかるのだが、それはそれとしてこの文章が古くなっていることは否定できまい。このワールドコン*1自体8年前の話であるからなおのことだ。
星新一は自分の作品から時代を感じさせるような描写を常に廃そうとしていて、たとえば電話をかける時に「ダイヤルを回す」という言い回しをしてしまっていたのをある時期から止めたりして、あまっさえ昔の話が文庫に再録されたりする時にはいちいち直したりしていたらしい。その心意気は凄いと思うが今考えると流石に焼け石に水というか、正直無駄なんじゃないかなーという気もする。
ちなみに原文はこう。

The sky above the port was the color of television, tuned to a dead channel.

かっこいいなあ。ぷるぷる。

*1:ワールドコン:ワールド・サイエンス・フィクション・コンヴェンションのこと。毎年行われている世界規模の SF ファンの祭り。