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『ハックス!』 今井哲也

アフタヌーン6月号にて完結。最後はおそらく打ち切りという終わり方ではなはだ残念であった。一度書いたことがあるが、どこが面白いと一言で言いづらいながらも確実に面白かった作品で、正直アフタヌーンにはこれより詰まらない漫画が結構載っていると思う*1のだけど、それは主観だしまあ言っても仕方がない。
『ハックス!』はアニメーション研究会という題材を選びながら、オタク部活日常漫画に堕することなく「アニメを作る」ことをちゃんと物語の縦糸に据えてストーリーを運んでいた。それでいながら先輩たちはもちろんオタクだったり(オラクルであるコジマくんも、深く掘り下げる場面はなかったがおそらくそれなりのオタクなのだろう)、という辺りのバランスがよかった。
また、ディテールがおそろしく丁寧に描かれた漫画で、会話部分の科白がいつも感心させられるような上手さだった。漫画という表現を選ぶのなら普通こういう部分は略すだろうな、というところまでめいっぱい書きこんで会話を作っていた。これは四季賞の受賞作からそうなので、間違いなく作者は意識してやっているし、編集もその多少の冗長さは承知で通しているのだろう。駒数や吹き出しが増えてしまうし、また結果的にこの手法のおかげで展開が遅くなって、ひいてはこの打ち切りにつながってしまったとすら言えるのかも知れない。でもこの細部の描写こそが『ハックス!』を凡百の学園物からわかたっていたのだと思う。
作者の次回作に期待したい。

*1:具体例を挙げないのも卑怯なので書いておくと『空のまにまに』や『オクターヴ』辺りがおれの中ではそれに該当。『ぢごぷり』もそうかな。まあ8月号で終わるらしいけど。