黄昏通信社跡地処分推進室

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「海外競馬」休刊によせて

以前こんなことを書いたんだけんども。


この雑誌も最初900円*1ぐらいだったのが、4号目からいきなり1300円とかになって、「いや、年間購読してくれれば1冊1000円でいいから」みたいなことが書いてあったんだけど、4号目から30%値上げするような雑誌を誰が年間購読するというのだろうか。もちろん年間購読が増えればそれだけ採算が安定する可能性は上がるわけだが、率直に言って現状ではあと6号続くとは確信できない。
まあ見事に、もとい、残念ながら次の7号を最後に休刊となった。
海外競馬、という分野自体に対しては、ある程度の需要があるのは確かだと思う。ただ、その範囲、というか、深さのレベルはあまりにも幅が大きい。おれのようにでかいレース以外はなにも知らない奴も居るし、血統や地域ごとの相対的なレースレベルに踏み込んだ知識を欲する人も居るし、ネットでは見つけづらいマイナー国の情報を欲している人も居るだろう。そのどの深さにピントを合わせるのか、ということが、誌面を見ていても見えてこなかった。おそらく、ある程度広い範囲の深さをカバーする方向性ではあったのだろうが、ただでさえ単価が高かったことでもあるし、売り上げを伸ばせなかったのだろう。
個人的には、たぶん、狙うべき深さは相当浅いところだと思う。
競馬ブックの海外ニュースではもの足りない。でもネットであちこちチェックするほどまめじゃない。そういう人はそこそこ居るんじゃないだろうか。そんな人が必要としているのは、海外競馬を見ていく上での「軸」あるいは「地図」だ。
たとえば、ファルブラヴとか、ちょっと前だとファンタスティックライトなんかがあちこち走り回ってた時期は、おれなんかにもレースや馬のレベルがある程度掴みやすかった。そうなると、おなじレースの結果を見るのでも随分面白さが違ってくる。季節季節の大レースが「点」だとすると、それを結ぶ「線」、あるいはレベル差/地域差を横軸に置いた「面」。そういうものが、ごくおぼろげながら見えてくるからだろう。国内の競馬に関しては、何年か見ていれば嫌でもそういう線/面的な把握は頭の中で形作られるけど、海外競馬で自然にそれが見えるまでになるには、多分自力で情報を集めるレベルまで行かないと駄目だと思う。
もちろんその把握は本質的に主観的なものではあるのだが、多少バイアスがかかっても構わないから、そういう「軸」を無理矢理はっきりさせるような記事の構成になっていればよかったんじゃないだろうか。合田氏のコメントは確かに的確だが、その主観を排したというか淀川長治的なコメントから、2ヶ月に一度の雑誌を読むような層が自分なりの「軸」を作ることは多分結構難しい。
素人向けだからこそ、もっと主観の押し付けがあってもよかったんじゃないか。
まあ、分量の割には深さだけじゃなくて方向性もばらばらだったかな。レース結果あり海外競馬場レポートあり名馬物語あり、みたいな感じで。雑誌である意味を考えるのなら、レース結果を中心にすべきだったとも思うけど、これはおれの個人的な好みだしな。
休刊は残念だけど、保たなかったこと自体は仕方ないか、と。

*1:正しくは税込み1000円だった。(引用注)