黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

有馬記念

熱いレースだった。まさかマッチレースになろうとは思っていなかったが、地力が抜けていたのはこの二頭だったということだろう。万全でないながらも緩みのないラップを踏んだタップダンスシチーと、すぐに二番手につけて負かしに行ったゼンノロブロイ。馬場を考えればレコード決着は必然だった。どちらも強い馬だし強いレースだった。3着以下の馬とは一段違うレースをしたと、今日に関しては言えると思う。
ゼンノロブロイの微妙な華のなさという指摘が Brain Squall にあって、これには確かに同意するんだけど、


苦手な条件でこれだけのパフォーマンスを見せたことからは本馬が歴代の名馬と並んだといっても過言ではないだろう。ただ何とも華がないのはなんなんだろうか。レース後の中山も盛り上がっていたとは言いがたかった。やはり藤沢厩舎サンデー産駒外国人騎手という組み合わせに観客が飽きてるといわざるを得ない。
これは半分に過ぎなくて、あとの半分は「今年の前半王道を全く踏んでこなかった(どころか『弱い4歳馬世代』の象徴みたいな馬だった)」ってところにあるんじゃないのかなあ、と思う。成長があったにしても、騎手が代わったにしても、ちょっと解釈に戸惑っているうちにあっという間にGIみっつぶっこ抜かれちゃった、ってファンも多いんじゃないだろうか。鮮やか過ぎる変わり身が、逆に物語の成立を許さなかった、とでも言うか。
あとは上とのシナジーで、もともと藤澤厩舎+サンデーの素質馬ってのは確かにもはや物語を持ちづらいバックボーンなわけで、それでも語られるためには連戦連勝でもするしかなくはあり。その意味では来年のパフォーマンスこそがこの馬について語られるために必要なピースになるんだろう。
タップダンスシチーはここへ来ても自分のレースを貫いただけで、力は当然これぐらいはある。それにしても痺れるレースだった。このラップでも四角ではまだ余裕があり、坂を上がってからも最後まで抵抗して、結果的に2着を守り通した、という走りは最高にかっこよかった。現役引退→続行騒動はチームワークの面で好ましくはなかった*1けど、現役を続行してくれること自体は喜ばしい。この馬も昨年のJCが不良馬場だったり、肝腎の有馬で惨敗してしまったり、あるいは今年はフランス行きの飛行機が飛ばなかったり、大事なところでちょっとツキが足りない印象はあって、そのために誰もに語られるには届かない馬に留まっているけれど、今年国内での3戦は全部素晴らしいパフォーマンスだった。来年も心を揺さぶるようなレースを見せて欲しい。
シルクフェイマスは宝塚の走りを考えれば不思議はない好走。五連勝なんかもしてる馬だけど、このレベルだと使い込むと辛いのかも知れず、逆に狙ってきたレースでは常に不気味、みたいな存在になっていくのかも知れない。GI勝って欲しい馬ではあるんだけど。
ダイタクバートラムはよく差して来たけど……うーん、結局ここまでなのかなあ、という思いはあり。
デルタブルースは現時点での力の差はあろうけど、来年へ向けては楽しみなレースになった。秋5戦目ってのもほんのちょっと響いたかも知れない。まあそのうち2つは1000万下なんだけど。
コスモバルクは最後に来て力尽きた印象。抑えが利いたというより行く気力がなかった気がする。春はあの死のダービーで一番きついレースをして、秋は如何に相手が弱かったとは言え絶対勝たなきゃいけない北海優駿から数えて5戦目。ここで走れたらほんとに化け物だったけど、流石に馬の子ということで。この後がくっと来なければいいけどねえ。今回のレースが総帥の指示がどうとか言う話ですらなかったのは、さてこの馬にとって幸運なことだったのか。

*1:好ましくはなかった:陣営に伝えるより先に報道に話が行ったのは失礼な話だろう。