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『タフの方舟1 禍つ星』『タフの方舟2 天の果実』 ジョージ・R・R・マーティン/酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫SF,2005 ISBN: 4150115117/ISBN: 4150115168

2巻の方の惹句に「イーガン、チャンがわからなくても、この本の面白さはわかります」などと書いてあって、ちょっとむきになって買う。(グレッグ・)イーガンと(テッド・)チャンが大好きな奴が読んだらどうなるか試したかったから。
結論から言うとそこそこ面白かった。ハヴィランド・タフと持ち船を主人公とした連作短編だが、技術に対するこだわりは見られず、物語志向の作品群。わりと昔ながらのSFの文法に則っていて、入り込みやすい反面驚かされるようなところもあまりない。特にイーガンと対比するのはわからんでもない気がする。
環境エンジニアリングという設定が一番活きているのは最初に書かれた「魔獣売ります」。ファンタジイ風の設定に阿漕な商人タフが踏み込んで行くのが楽しい。ある種お約束な軍拡競争ものではあるんだけど、素直に楽しめた。あと七作中三作に登場するトリー・ミューンは作者のお気に入りらしく、連作全体に軸を通す役割を果たしているが、日本語訳も込みで中々魅力的な人物に仕上がっていると思う。これに限らず翻訳は『ハイペリオン』の酒井昭伸で、安心して読めた。
たまにはこういうのもいいかなというところ。