ソリッドステイトと聞いて未だに一番最初に思い浮かぶ言葉は「ソリッド・ステイト・リレイ(SSR)」で、多分ソリッドステイトとつく言葉で初めて聞いたのがそれだった。バイト先にあった『サンバdeアミーゴ』というゲームで、行灯*1の両側についているランプがよく点かなくなっていたのだけど、大抵球を替えても駄目だった。そのランプの点滅の制御に使われていたのが SSR で、球を替えても駄目なときはそこの SSR が死んでいた。で、「SSR って何の略ですか?」と社員に聞いて、誰かがソリッドステイトリレイだと教えてくれた。
SSR はたしか単体で小さなボードに取り付けられていたのだけど、ボードを修理に出したりはせず、同じ型の SSR を買ってきて死んだ奴と取り替えて直していた。もうほんとによく死んでたので、多分そもそも SSR の定格が間違ってたんだと思う。が、もう少し大きな数字の SSR を買ったりとかまではしなかったように記憶している。
『サンバdeアミーゴ』はもうひとつ、これはご存じの方も多いと思うがマラカスのつながっているチューブが大変よく切れた。発売直後はともかく、ある時期以降は大抵のゲーセンで切れたチューブをテープで巻いたりして運用していたのではないか。あれはもうどうしようもなくて、とにかくまめに直すしかなかった。常時予備のマラカスを2セットほど準備しておいて、切れたら交換し、外してきた奴をバックヤードで直した。切れたところを縮めてつけ直したりもしていたけど綺麗につけるのは難しく、チューブを丸ごと新しいのに交換することが多かったように記憶している。その他にもマイク*2がわりと死にやすく、やっぱりちょくちょく替えなきゃいけなかったりして、かなり手間と部品代がかかっていたと思う。にもかかわらず結構長い期間置かれていたから、それなりに稼いでいたんだろう。メンテナンスのアルバイトの立場だとインカムは知ることができなかった。
時々チューブの発注が間に合わず、満足な状態のマラカスをふたつ用意することができなくなることがあった。そういう時メンテナンスの判断としては稼働を止めるということにしていた。曲がりなりにもテーマパークの一部としてビニールテープで巻かれたコントローラが置いてあるのはあんまりじゃないかという考えだった。だが止めていればもちろん一銭も稼げないし、チューブとて安くはない。止めることもなんとなくメンテナンスの共通見解みたいにはなっていたけど、必ずしも全員が心からそれが正しいと思っていたわけではなかったようにも思う。あの判断が妥当だったのか、今考えてみてもはっきりとはわからない。
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幻のテーマパーク内幕小説『PARKLIFE』*3ではこんなような話を書こうと思っていた。虚構の世界と現実世界のあいだでスタッフたちは働いているわけだけど、スタッフの中にも虚構側と現実側がある。その現実側(つまり客から遠いほう)で何が起きているのかは単純に面白いんじゃないかと思われるし、まま起きるコンフリクトは多分テーマパーク永遠の課題ではあるのだろうなと。