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『新しい航空管制の科学』 園山耕司著 講談社ブルーバックス,2015-05

たしかどこかのブログでこの本の感想を見かけて、へえ面白そうだな、航空管制についてもちょっと知ってみたいし、と思ってあまり調べずに借りてみたのだが、最初に書いてしまうとちょっと失敗だった。おそらくだが、同著者が先に出している『航空管制の科学』を先に読むべきで、そういった基礎の基礎がないとかなりつらい。
仮想の旅客航空便に対する管制を例に引きながら、航空管制がどのように行われているかを説明しているのだが、まあとにかく航空用語って略語と数字とジャーゴンのかたまりなので、読みながらついていくのがかなり辛い。そうでなくても文章が硬くてサービス精神に乏しく(本書と前作のタイトルを見れば言わんとするところは伝わると思う)、読みやすい文章とはいいがたいので、それもきびしかった。


印象に残ったことをふたつだけ。
航空関連ではヤードポンド法使ってる印象があって、慣習的に仕方ない面はあると思うしもしメートル法に切り替えるとなってもその際には危険が伴うだろうから変えられないのも止むを得ないんだろうなーと漠然と思っていたのだが、なんと世界中でヤードポンド法使ってるわけじゃないんだそうで、たとえばロシヤでは完全にメートル法らしい。だからロシヤの管制空域に入る際には換算が必要になるらしく、そりゃ一斉に切り替えるよりよっぽど危ないんじゃないのと思った。これはロシヤが完全に正しいだろ。実際には危険だけじゃなくてコストもめちゃめちゃかかるだろうし、現実問題として変える「必要」はないのだろうし、これからもこのままなんだろうけど。
あとマックナンバーテクニックという手法が面白いと思った。太平洋上などは非常に多くの飛行機が飛んでいるため、水平方向にも垂直方向にも平行に航路を何本もとってそれぞれに飛行機を通らせるのだけど、当然ながら同じ航路の(すなわち前後に並んでいる)飛行機は同じ速度でないと普通に危ないし効率も悪い。その速度の指定には「音速の 0.xx 倍」という指定をするのだそうだ。通常管制は対地速度か対気速度で指示をするが、洋上のように音速に近づくとピトー管がややあてにならず、対音速比の方が正確に計測できるのだそうだ。で、音速は mach なので英語読みしてマックになるとのこと。