黄昏通信社跡地処分推進室

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青のオーケストラ(ネタバレ)

わりとしょうもないネタバレ。今回はハルについて。


ハルちゃんかわいいですね。この、こう、絵に書いたような負けヒロインぶりが……。キャラクター(性格)的には秋音の方が断然負けヒロインぽいんだけども、ストーリー展開的にはハルが負ける未来しか見えない。「実は青野のことを先に知っていた」「幼いころに約束を交わしている」とかは正ヒロインの持ってるアイテムなんだけど、前者は当たり前の事実として処理されており、後者は繰り出したときの青野のリアクションがあんまり芳しくなかった。とは言っても、考えてみるとそれ自体は正ヒロイン性を否定するものでもない、というかそれを覆す展開は全然あり得るよな。むしろいきなり効力を発揮したら印籠のありがたみがない。にもかかわらずハルが負けヒロインぽく見えるのはなんなのだろう。飛びぬけたところの無さ、はひとつあげられるかもしれない。バイオリンはめっちゃ上手いんだけど青野や佐伯とははっきり差があると作中で明らかになっている(ここらへん作者はシビアだと思う)。性格は控えめすぎるほど。作中ではものすごい美人というわけではなさそう(漫画だとみんな可愛く描かれちゃうので判断がむずかしいところだけども)。むしろこういうスペックとしてのヒロイン性が不足しているのかもしれん(要審議)。
デート編はそこに至るまでも含めてとてもよかった。「ふたりで行かない?」という科白をハルが口にすることのなんと貴いことか。それで青野があー、うん、みたいな感じであやふやに承諾するそのリアリティがまたいい。青野はその瞬間までハルのことを異性としてまったく意識してないわけだけど、みんなで行こうかというのに対して敢えてふたりで行きたいと言われたら意識せずにはいられない。でもまだその重みを理解できてはいないわけです。嬉しいか嬉しくないかで言えば嬉しい。で承諾する。断るようなもんでもないから、ぐらいの感じに近いだろう。それから当日に至るまでこれってデートなのかデートじゃないのかみたいな感じでいる、実に恋愛盆暗男子らしいふるまいを見せる。ハルは実質デートのつもりでいるので気合充分、でもそれを見せすぎないように、でもちゃんと可愛く、という感じで当日あらわれる。そして喜んだり落ち込んだりする、そのさまが本当に可愛らしくてよかった。ショートブーツさいこう。……そこへ篠崎を登場させるというのがまた作者の謎にシビアなところで、さすがにちょっとこれかわいそうすぎるのではないか、と思わなくもない。もちろん救いは充分にあるのだけど(ここでの青野は少しかっこよすぎると思う、まあ許容範囲だとも思うが)、初デートにこれ突っ込んでくるのはすごい。あとは、巻末のおまけ漫画で描かれた夕方のエピソードはよかった。ここの青野はちょうどいいかっこよさだと思う。そして、バイオリンを引き取りに行くのを母に頼んでしまうという青野のうかつさはオチとしても処理としてもパーフェクト。