黄昏通信社跡地処分推進室

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やっぱり書いておく(くそ長文)

賢竜杯の予選について話題になっている(もうそろそろ下火)。簡単に書くと、一度本戦出場権を取った人が他の予選にも出ることができる上に、その人が再び権利を獲得できる順位に入賞した場合権利の繰り下がりが発生しない、というルールがあって、それによって既に権利を取った強者が他の予選に参加することが「権利潰し」と見なされてしまう、という状況が発生してしまっている。
本戦出場権を持っている人が他の予選にも出られること自体についてはそれほど問題があるとは思わない。むしろ、定期的に開催されている店舗大会の場を借りてそこに賢竜杯の出場権利を付与する、という形で行っている予選が多いのだから、他の大会で権利を取ったことで参加を疎外されるようなことはあるべきではない。大会のために遠征するプレイヤーの存在を考慮すれば尚更だ。
権利の繰り下がりが発生しないことにこそ問題はある。
繰り下げを行わない理由について、ほむらひろし氏はブログでこう書いている。


ますは、「決勝が消化試合になることを避けたい」ということが挙げられます。
(引用者略)
権利の繰り下げをありにした場合は、「それ以前の予選で権利を獲得しているプレイヤーが入賞した場合、その権利は下に繰り下げる」というようなルールになります*4。
これを採用したと仮定すると、3枠の予選で決勝に権利既得者が残った場合は、その時点で決勝進出者全員の権利獲得が決まります。
賢竜予選と言えども基本的には各店舗大会をお借りして予選にさせて頂いているものですし、決勝があまり意味を持たない、というのは歓迎できません。「決勝に行けば権利確定」というシチュエーションは避けたいのです。
この理念はある程度理解できる。あくまで店舗大会としてが第一、賢竜杯の本戦出場権は付加的なものであるというスタンスはここでも貫かれている。権利を確定させたから決勝は流す、みたいな展開になってしまっては協力してくれている店舗にも申し訳ない、というところだろう。
だが、「決勝で3位以上に入れば権利が確定」というルールの下では、優勝するための最良の戦術と権利を取るための最良の戦術が違ってくる。これは「4人それぞれが好きなジャンル・形式を選んで勝負」という QMA5 の店内対戦の仕様上避けられない。
そして、予選に出るプレイヤーの多くは「優勝よりも権利を取りたい」と考えることだろう。データの裏付けはないが、賢竜杯はそれだけ大きな存在に、特別な大会になっているのだ*1。そもそも「消化試合になることを避け」るために権利を3位以上に限定する、ということ自体が多くのプレイヤーが優勝より権利を目指すだろうことを前提にしている。
権利を取ること、つまり3位以上を狙うのなら、自分の優勝を目指すよりも、誰かひとりの苦手ジャンルをふたり以上で突く方が一般的には分がよくなる。それが他の誰かを優勝させる可能性を高める選択だとしても。
(また、予選大会の決勝戦で多く採用されている「ボンバーマン2本先取」における戦術についてはおてう氏が日記で書かれている(10-12 の項)ので参照されたし。非常に面白い考察・レポートです)
逆に、権利の繰り下げを行うルールで「決勝に行った時点で権利が確定」という状況になれば、むろんある程度全員のモティヴェイションは下がることだろうが、決勝戦では全員優勝を目指す戦術を採るだろう。
店舗大会の決勝として、どちらがあるべき姿に近いだろうか。
個人的には、どちらとも言いがたいと思う。いくらあくまで店舗大会が第一と言ったところで、賢竜杯という大きなイベントの予選となってしまったらその影響は免れ得ない。つまり、「消化試合になることを避けたい」という意図は、権利を3位以上に限定することでは充分に実現できていないと考える。
一方で、権利が繰り下がらないことの問題は明らかだ。冒頭で書いたように、既に権利を持っている人が他の予選で上位に入賞した時には常に「他の誰かの権利を“潰し”た」形になる(正確にはその枠は最終予選に回るのだが、その日のその大会は一度しかないのだからそれで問題がなくなるわけではない)こと。
これは権利を“潰される”側からも当然ある程度の文句が出るであろうシステムだし、おそらくは権利を“潰す”立場に回ってしまったプレイヤーにもつらいシステムになってしまっている。AMS 氏の日記に切実な記述があったので引用しておく。

もちろん誰一人として直接悪意を向けられたわけではありませんが、あの場で起こりかけていたことの意味はその場の誰もが理解しており、かつその事実によって見えない何かから責められていると感じていました。もう二度とあんな状況に立ちたくはありません。
思うに、規約はそれに則った行動の有効性は保証してくれますが、そこで生じる感情の軋轢だとか捻じれみたいなものは誰も負うことができない。
たぶん同じ立場になったら似たようなことを感じる人は多いのではないかな。
ある大会で権利を取ったことで別の店舗大会で参加を疎外されるようなことはあるべきではない、という理由で、権利を持っている人も他の予選に出られるというルールになっている(←これはあくまで勝手な推測だが)のに、今や権利を持っている人は他の予選にものすごく出づらくなってしまっている。これは主催者側の望んだ状況だろうか。
ルールを定めた時点でこのような事態を想定することは難しいようにも思うが、現状ではルールが意図通りに機能しているとも思い難い。始まってしまってからルールを覆すことは不公平を発生させるが、このままのルールで続ければ多くのプレイヤーに小さな不満を少しずつ積み重ねることになるだろう。

上の文章は自分の考えを書いただけで、特定の誰かや行動を非難する意図で書いたものではない。
賢竜杯については、こんなことを書いたけど、個人的には応援している。トッププレイヤーがこれほど多く全国から集う大会は他になく、この大会の存在がプレイヤーのモティヴェイションの向上や、ひいては QMA というゲームそのものの盛り上がりに確実にある程度は寄与していると思うからだ。直接予選に出たり、まして本戦に出られるプレイヤーとなれば全体からすれば一握りであろうけど、それでも最上位のプレイヤー層というのはその下の層のプレイヤーをドライヴする力があるし、その下の層はさらにその周りの人に影響を与える。そういう力が確実にあると思うのです。
おれ個人としては予選に出る心算も出ない心算も今のところはない。これまでの店舗大会と同じように、気が向いて都合が合えば出るかも知れない。

*1:予選ぐらい出てから言えって話だが。