黄昏通信社跡地処分推進室

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2016 年[最近の]振り返り

前回の『精霊の箱』で年末までに摂取したコンテンツはおしまいです。しばらくろくに使ってなかったタグだけど、昨年はちょっと頑張って使ってみようと思って意識的に頑張って、数としては 62 本書いたようだ。結果としてなんとなく目標にしていた週に一本はなんとか超えられたみたいなので、個人的にはそこそこ満足している。ちなみに内訳は本が 54、映画館の映画が4、テレビで観た映画が3、テレビアニメが1(三月のライオンについてのちょっとした覚え書き)。
で、まあ、ともあれひと区切りではあるので、おすすめというか、特によかったのをあらためていくつか挙げてみよう。順番はエントリの日付順、つまりおれの摂取した順。

フィクション

//d.hatena.ne.jp/natroun/20160206#p1">『ブラックアウト』/『オール・クリア』 コニー・ウィリス著/大森望訳:コニー・ウィリスのタイムトラベルものの集大成。臨場感、スリル、楽しさ、どれをとっても一級品。繰り返しで謎を引っ張る作者の悪い癖もあまり出ていなくて、でも終盤の展開はちゃんと意外だった。厚めの上下巻の二部作とかなり長いのがたまにキズだけど、それでも無駄に長くはない。SF 要素も薄いので特にジャンルを意識しなくても読めると思う。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160211#p1">『四とそれ以上の国』 いしいしんじ:感想としては「変な文体だなあ」「よくわからないなあ」だったのだが、しかし読了後一年近く経つのに印象は強い。タイトルからわかるとおり(わからない)四国の話。改行もなく現実と非現実が入り混じる描写が延々と続く文章が妙に心に残る。なんといっていいかわからないが力のある物語だった。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160324#p1">『世界は一冊の本 definitive edition』 長田弘:これは詩集。おれにとってここに収められている詩のいくつかは確かに「賦」なのだ。“この世に足りないものなんて、何もないのだ。”――とは、おれには思えないけれど、そう言い切ってしまうことの美しさはわかるつもりだ。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160505#p1">『クロックワーク・ロケット』 グレッグ・イーガン著/山岸真中村融訳:ファンタジーと SF の境目ってなんだろう? 現実世界とは違う物理法則が支配する世界が舞台の小説があれば、それはもうファンタジーなんじゃないの、と思うけど、違うのだ。架空世界のサイエンス・フィクションというおそろしい力業を、作者は三部作というスケールで展開してみせる。これは開幕作だがエンジン全開、イーガン節炸裂、どこへ行くイーガン、というかんじ。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160824#p1">『火星の人』〔新版〕  アンディ・ウィアー著/小野田和子訳:ど直球の宇宙開発ものハード SF が今でもこれほど面白くなりうることを示した、10 年代の記念碑。メディアは違うけど『宇宙兄弟』と本作は、まだまだやれるじゃんこのサブジャンルも、と思わせてくれた。おれこのサブジャンルほんと好きなのでこういう作品が出てきてくれたのは嬉しい。当初一冊で出ていたのが分冊されたことだけは許さない。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160908#p1">『オービタル・クラウド』 藤井太洋:SF、冒険、エンターテインメント。わかりやすく楽しく面白く、つぎつぎにページをめくらせる力がある。この世界で近い将来に起こりそう、ってのはわくわくするよね。それこそが SF のいいところだしだからこれはいい SF だ! 読め!
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160916#p1">『残像に口紅を』 筒井康隆著:ふた昔以上前に書かれた、信じられないようなアイデアの実験小説。ひらがなが一文字ずつ減っていく制約の中で書かれる物語は、しかしそのあまりに巧く成立しているがゆえにその巧さが読み手に伝わらないというジレンマを抱えている。狂気の一作。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20170118#p1">『自生の夢』 飛浩隆著:まだおれはたぶんこの本のほんとうのすごさをわかりきっていないけど、しかし凄かった一冊。美しさと残酷さ、そして怒濤のホラ……じゃなくて、想像力。この世界のどこか地続きのところに、見たこともない世界が広がっているかも知れないこと。十年待った甲斐はあったというもの。

ノンフィクション

//d.hatena.ne.jp/natroun/20160308#p1">『絶対音感神話』 宮崎謙一:絶対音感、そのすごげな響き、謎の実態。なんとなく「ひと握りの天才だけが持っている特別な能力」みたいな感じがするけど、そういうわけではない。音楽家に必須の能力のように思われがちだけど、それも違う。いやむしろ、――という本。個人的に絶対音感にぼんやりした興味があったのだけど、この本と最相葉月絶対音感』(→感想)は大いにその興味に応えてくれた。気になる人は著者の論文など見てみるとよいと思う。それに興味が持てて、もう少し詳しく知りたいと思ったなら、この本に行こう。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160329#p1">『テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?』 ケヴィン・ケリー著/服部桂訳:昨年のおれの関心の中に、発達する技術に対して人間はどう向き合っていけばいいのか、というのがあった。その流れで読んだ本の中では一番インパクトがあった。圧倒的な情報量でぐいぐい来る、いかにも海外のノンフィクション。ヴィジョンには賛成できるところもあったしできないところもあったけど、総じて納得できるところは多かった。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20161026#p1">『気候変動を理学する―― 古気候学が変える地球環境観』 多田隆治著/日立環境財団協力:地球は温暖化しているのか、しているとしたら何が起きるのか。誰もが知りたくてでも目を逸らす分野について、古気候学という道具で切り込んだ一冊。気候変動にひそむ大小様々なサイクルから未来を予測する手がかりを提供してくれて、充分悲観的な状況を示唆しながら決して煽らないスタンスが素晴らしい。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20161031#p1">『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』 松尾豊著:ディープラーニングを自分の中で最低限のところまではわかったふりをしておきたいという極めて不純な動機で読んでみた本。そしてちょっとだけわかったのですごいテンション上がって感想書いた。だからリンク先の感想はさいあくです。本の内容とおれの調べたことと理解した気になったことがぐっちゃぐちゃになっている。この自分の文章大好きなおれさまが読み返す気も起きない。でも本書は面白かった。説得力ゼロ。

映画

//d.hatena.ne.jp/natroun/20161004#p1">『シン・ゴジラ』 樋口真嗣監督/庵野秀明総監督:ゴジラ観たことないし怪獣映画とかも特に好きじゃないけどこれは面白かった。ゴジラは気持ち悪かったし怖かったし強かった。その上で、日本って国のフレームのなかでみんなが力を合わせてやっつける、ってのがよかったのかな。まあ適当言ってますけど。楽しい映画でした。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20160923#p1">『君の名は。』 新海誠監督:とにかくこの映画には心を動かされて、あれはなんなのだろうと今でも思う。無理な設定も多いし完璧にはほど遠い映画ではあるけど、でも素晴らしかった。合う合わないはあると思うが、おれには合ったし、好きな映画だ。また何年かしたら観たい。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20161215#p1">『聲の形』 山田尚子監督:重いテーマに果敢に挑んだ原作を、基本的にはなぞりながら、丁寧に映像化した作品。その過程で欠けてしまったところもあり、逆にすっきりしたところもあり、総じてよくできていたなあと思う。
//d.hatena.ne.jp/natroun/20170130#p1">『この世界の片隅に』 片渕須直監督:これは先日感想を書いたばかり。精緻に造られた世界の中で魅力的な人物が生きていた映画、と書いたけれど、今のところそれに足すべき言葉は思いつきません。まだやってるから観ろ。



そんなところでした!
今年ももそもそ読んでるので、またぼちぼち感想書いていく次第。もう年初に読んだ本とか忘れかけてるけどね。がんばります、ぼちぼち。