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『人間VSテクノロジー:人は先端科学の暴走を止められるのか』  ウェンデル・ウォラック著/大槻敦子訳  原書房,2016

人間VSテクノロジー:人は先端科学の暴走を止められるのか

人間VSテクノロジー:人は先端科学の暴走を止められるのか

少し前から、テクノロジーの進歩と人間の関係についてぼんやり考えていて、テクニウム(参照:http://d.hatena.ne.jp/natroun/20160329#p1)という捉え方は魅力的だけど、あまりにも無責任なんじゃないの、と言われるとまあそうですよねえという気もして、要するに相変わらず軸もなくふらふらしている。そんな状態から少しでも前に進む手がかりを見つけられればと期待してこの本を読んだ。


……のだが、うーむ。正直期待はずれだった。著者はテクノロジーのもたらしうるカタストロフをいくつか例示したうえで、それを防ぐには予防原則で臨むしかない、という。それはわかる。技術には変曲点があって、そこを超えると後戻りはほぼ不可能になる、というのはおおむねその通りだろう。だけど予防原則がうまくいくとは思えないのだよな。これは『テクニウム』にそう書かれていたことがおれに大きな影響を与えていると思うのだけど(だいたい先に読んだ方が強い影響を与えるので)、でもそこを乗り越えようという話なのであれば、もう少し具体的な「こうすればうまくいく」「これについてはうまくいった」がないといけないような気がする。まあそんなもんあったら苦労しないわいという話なのだろうけど。


とはいえ、この件、考えない方がめんどくさくないし楽しいから、なんとか考えないですむ方をおれの脳が正当化する側面はあるはず。そしてそれはみんなそうだから、歯止めが効かない方向に進む。そのことだけは頭に入れておいた方がいいのだろう。