黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

家の近所にある公共施設、裏手に大きなソメイヨシノの木が何本も植わっているのだけど、ちょうど引っ越してきた頃あたりからいよいよ老いてきて、一本は根元から伐られ、他の何本かも途中から結構ばさっと枝を落とされた。伐られたあとの切り株からは最初の二年ほどはひこばえも出てきていたけど、それも容赦なく刈られているうちに生えなくなってしまった。そのあとは朽ちるに任されて放置されていて、おれは子供たちと遊ぶとき時々登ったりくさって柔らかくなったところをひっぺがしたりしていたのだけど、この日通りかかったら切り株も綺麗さっぱりなくなっていた。周りに生えていた草も全部なくなって、もしかすると新しく入れられたのかも知れない真平らな土の上に華奢な苗木が一本だけ植えられていた。「オカメザクラ」と名札がついていた。ようこそわが町へ。


伐られる前のソメイヨシノが大きく枝を広げていたさまはだんだん記憶のなかでぼんやりしてきている。やがてそこにはもう少し濃い色のサクラが咲くことになるのだろう。そのときおれはどんなことを思うだろうか。