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『エビの歴史(「食」の図書館)』  イヴェット・フロリオ・レーン著/龍和子訳 原書房,2020-12-16 ISBN:9784562058563:detail

図書館の新着図書の棚に入ってたので借りてみた。ここでのエビは英語で言えば shrimp と prawn にあたるもので、robster と crayfish は含まないとのことで、後者は別の本になってるのだそうだ(邦訳は『ロブスターの歴史』)。「『食』の図書館」シリーズということで、人間がいかにエビを食べてきたか、というようなことが時系列に沿って書かれている。ちなみに shrimp と prawn の区別は明確でなく、なんとなく小さいのが shrimp、大きいのが prawn となっているが境目は曖昧で例外もあり、また言語によっては違うところで線が引かれていたりそもそも区別がなかったりもするのであんまり論じても不毛、みたいなことが書かれている。まあそうなんだろうな。日本語では shrimp と prawn どころか robster と crayfish まで同じ言葉であらわしているよ、ということもちゃんと書いてあったのには感心した。
エビ食の歴史は古いらしく、紀元前にはすでに食べられていたらしいことも分かっているが、他方でエビの殻は貝殻のようには残らないので、特殊な条件下で化石化した数少ない例が出てくるか、あとは文字による記録に頼るしかないらしい。おそらくあちこちで食べられていたと考えられ、遠くから運ばせたりもしていたのだそうだ。海の近くではありふれた食べ物であり、そうでないところでは贅沢品だった。そりゃそうではあろう。歴史がある割にはヨーロッパで一般的な食べ物になったのはけっこう遅かったようだ。そしてその習慣がアメリカに渡ってから、ようやく爆発的に消費されるようになったらしい。きっかけはエビの缶詰ができたことだという。エビの缶詰はそこそこ食べられる味だったらしいが時間が経つと色が変わってしまい、品質には影響しないものの食欲を減退させるには充分だったようだ。その比較的すぐあとに冷凍保存が実用化され、今度こそエビはたくさん食べられるようになったのだそうだ。
日本人としてはエビの天ぷらが出てきたのがちょっとうれしいところ。「世界中に広まった料理」という感じで紹介されていて、え、そうなの?という感じだったけれど、かなり好意的な評価だった。
判型としてはソフトカバーだが、内容としては軽めの新書程度であっさり読める。このシリーズ、やたらたくさん出ているようで、興味がある食材のを見かけたら手に取ってみてもいいだろう。