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『ダウントン・アビー 新たなる時代へ』 サイモン・カーティス監督 ジュリアン・フェローズ脚本 ユニバーサル/東映東和,2022

ファンムービー、二作目。トムとルーシーの結婚式のシーンから物語が始まるので、前作からやはりそれほど後というわけではなさそう。(※翌年らしいです)
屋敷に映画撮影のオファーが来る。カジノのシーンを撮りたいのだという。一家の反応は分かれるが、とにかく話を聞いてみようということで映画の監督が屋敷に来る。そこで提示された金額は想像より大きく、メアリーとイーディスは顔を見合わせる。それでも渋るロバートを、メアリーは屋根裏に連れて行く。折から降る雨に、屋根裏はひどい雨漏りで、バケツや洗面器がそこかしこに置かれていた。それを見てロバートも撮影を受け入れることを決意する。
並行して、ヴァイオレットにフランスから思いもよらない相続の話が持ち上がる。モンミレール伯爵が亡くなり、その遺言書には伯爵の持つリヴィエラの別荘をヴァイオレットに譲ると書かれていた。当代のモンミレール伯爵から招待を受け、ロバート、コーラ、イーディス、バーティ、トム、ルーシー、そしてカーソン(夫)が南仏へ向かうことになった。
というわけでここからはほぼプロットが二分されて展開する。屋敷で撮影隊を迎える居残り組と、南仏でバカンスを楽しむ遠征組を交互に見る、みたいな構造になっている。

以下ネタバレ。

  • ところが居残り組と遠征組、特に相互のプロットに関連はなく、ただただ並行して話が進む。見ている方はそれでも普通に楽しいけど一般的には脚本の弱さと捉えられるべきかな。
  • イーディスが不幸にならず、よかったはずなのだがやっぱりちょっと物足りなくて「業、、、」という感じだ。
  • トーマス、前作でできた恋人に開幕0秒で振られていて(登場すらしなかった)気の毒。あとトーマス、吹き替えの三上哲の声が渋すぎて本人の声が逆にちょっとイメージと違う現象が起きてしまう。最終的には幸せになれそうでよかったが、あいつほんとに大丈夫か?と思わなくもない。
  • アンナの出番は少なくて残念。とはいえ尺と人数考えると全員に出番行き渡らせるの完全に無理なのでまあしょうがないっすかね。
  • そんな中でデイジーは今回中々おいしいポジションだったのではないでしょうか。マーナ(女優さん、労働者階級の育ち)に活を入れるところはかっこよかった。
  • モールズリーさんもついに幸せになれそうでよかったですね。
  • 全体としてはダウントン・アビーにしてはわりと丸く収まるところに収まるよな、というかちょっと丸く収まりすぎるよな、というところはあって、あるいはこれが最後の作品になるのかもしれない。終盤では案の定というかとうとうというか、ヴァイオレットが退場する。最後まで毒と愛のこもった言葉を吐き散らかして眠るように息を引き取るシーンはあっぱれのひとことで、このシーンがテレビシリーズからの物語の集大成となるのならそれはひとつの綺麗な終わり方ではあろう。半端に引っ張って役者の方に先に限界が来て最期のシーンが描けなかったりしたらそれは悲劇でしかないので、作中できちんと亡くなるところを描けたというのは、もちろんファンとして寂しくはあるがやはりよかったという思いがはるかに強い。