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『残暑』 鬼頭莫宏 2004,小学館 ISBN:4091885012

鬼頭莫宏の短編集。微妙に衝動的に買ってしまい、あんまり期待してなかったがかなりよかった。作者の代表作『なるたる』は一時期読んでいたのだがいろいろな意味でついていけなくなって読むのを止めてしまい、後で単行本で読もうと思うほどは好きではなく、という感じだった。
処女作の「残暑」から、つい最近の短編まで7本を収録。デビューが少年サンデーだとは知らなかった。しかも1987年。相当キャリアがあるのね。あと、デビュー作からやたらよく出来ている。シンプルな線と描画で、どこかノスタルジックに、どこか切なく、しかし必ず少し苦味を含んだ物語を淡々と描く、という芸風が既に確立されている。
どれもかなりいい。「よごれたきれいな」を何故か読んだことがあったのだが、これが一番好き。「三丁目交差点電信柱の上の彼女」も好きだけど、惜しむらくはクライマックスにやや説得力がない。というか、もう少し上手く描けるかな、と思ってしまう。あと、「ポチの場所」の青汁は好き。
作者の描くノスタルジイが嫌いじゃない人にはおすすめ。