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『めがね』 荻上直子監督 めがね商会,2007

かもめ食堂』の荻上直子監督の新作。キャストがある程度かぶるしシチュエイションも似通っていて、ぱっと観た時の印象は「なんとなく似たような映画」。ただ、前作の主人公が本当に謎めいていて最後までほとんど何者かわからなかったのに比べると、今作は随分情報量が増えたなという感じがする。あくまで相対的には。
その情報に従うと、主人公はおそらく都会に住んで普段は忙しく過ごしていて、なんでもきちんきちんとこなせてしまい、携帯の届かないところに行きたくて来た島であくせくと観光しようとしてしまうような、という比較的つまらない説明になってしまう。でかいトランクを道の真ん中に置いて行く場面とかもうね。なに置いてってんだよとね。
それでも嫌味にならないのは小林聡美がぴしっとしてるからであり、なおかつ島の生活に馴染んでいく過程に全然無理が見られないからでもある。食事のシーンも、前作に続いてとてもいい。なにもかもがみずみずしくておいしそうだ。暮らすことと食べることは不可分であるから、生活を描く上で食事のシーンは大切なのだけど、たっぷり時間をとってちゃんとおいしそうに撮れているのがとてもよい。
しかし何にもまして最高だったのはもたいまさこでありもはや神々しいほどの存在感。今回は役も人間から半分はみ出してしまっているような位置付けで素晴らしかった。
ということでなかなかいい映画でありました。ちとそろそろバーバー吉野も観てみようかなあという勢い。あれももたいまさこなんだよねえ。