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山際淳司もう少しちゃんと読んでみようと思って何冊か買ってみた。スポーツ・ノンフィクションというのはおれにとって特別なところがある。おれはどんなフィクションを読んで/観ても泣くことはまずないのだが、スポーツ・ノンフィクションだと結構しばしば泣きそうになっちまうのである。それもそのツボが自分でもよくわからないところにあったりする。先日はこんなくだりで泣きそうになった。「落球伝説――池田純一」(『ナックルボールを風に』(角川文庫)収録)の一節だ。


阪神は巨人戦の前に中日との試合がある。それに勝つか、悪くとも引き分けに持ち込めば優勝が決まる。10月20日の中日−阪神はそういう一戦だった。
(引用者略)
そして、試合は中日が勝ってしまった。阪神ファンは、嘆いた。その直後の勝利投手、星野(仙)のコメントがこの試合の雰囲気を如実に語っている。星野はいった。
「やりにくい試合やった。阪神に勝たしてやりたいが、うちもAクラスがかかっているしね。
この辺でどういうわけだか涙が出そうになってしまった。どうにも不思議だ。別に泣くような内容じゃない。阪神はわりと好きな球団だが、そこまでの思い入れはない。星野仙一はどちらかと言えば嫌いだ。とはいえ、現役時代は気骨のある投手だったというイメージは漠然と抱いている。しかしこれ、率直に言って、人が泣きそうになる文章だろうか? 今読み返しても、泣きそうな感じには全くならない。自分の精神構造が全然わからない。