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[たくさんあるぜ]心に残るゲームたち (23):『タントアール』『イチダントアール』

■『タントアール』 セガ/アーケード,1993?
■『イチダントアール』 セガ/アーケード,1994

スピンオフ、というとちょっとというかだいぶ違うのだが、前回書いた『ボナンザブラザーズ』の主人公二人が再び登場したのがこの『タントアール』だ。
(2019-08-19 追記)これは完全な勘違いで、グラフィックは似ているけどキャラクターは全く別だった。下には『イチダントアール』について「モボとロボはもはや登場しない」と書いているが、そもそも『タントアール』の時点で登場していない、というのが正しい。
ゲーム内容は全く異なり、ひとことで言えば「ミニゲームの詰め合わせ」となる。当時としては珍しい形態のゲームだったが、このゲームが比較的ヒットしたためかフォロワーは多く、コナミの『ビシバシチャンプ』などは未だに続いているシリーズだし、コンシューマにも似たようなゲームが見られる。正直なところある程度安直に作れてしまう形態ではあるので、フォロワーにはかなりひどいゲームもあったと記憶しているが、元祖であるこのゲームはとてもよくできていた。
モボとロボは今作では私立探偵みたいなことをやっているらしく、悪漢を追いかけていくのだけど、途中で部下が追跡に気付いて立ちはだかり、ミニゲームに挑戦させられる。4つミニゲームをクリアすると部下をひとり倒せて、また追跡を再開する。最後の部下を倒すと悪漢に追いついてボーナスステージ→面クリア、という流れになる。全面ともこの展開は全く同じで、ただ1面ではひとりだった部下がふたり、三人と増えていく。確か全4面だったと記憶している。
ミニゲームは 16 種類。部下たちはそれを4種類ずつ「出して」きて、プレイヤーはそのどれかひとつに挑戦する。ひとつをクリアするごとに、その空いたスペースに別のミニゲームが補充され、またその4つのうちからひとつを選んで挑戦する。ミニゲームには毎回「ノルマ」が定められていて、その回数だけ課題をこなすとクリアしたことになる。
『タントアール』が面白かったのは、とにかくこのミニゲームの質が高かったからだ。ひたすらボタンを連打して鶏を鳴かせる「けっこう毛だらけコケコッコー」、高速で画面を横切る被写体をファインダーで捉える「フォトショック」、ごちゃごちゃに並べられた部品の中から設計図どおりにロボットを組み上げる「わくわくロボット工場」。簡単なパズルや動体視力を用いるゲームがやや多かったものの、それでも多彩な能力が要求され、単純ながら制限時間内にぶんぶん頭を使わされるため、続けているとだんだんハイになってくる。今でいえば「脳トレ」的なトリップ感があった。
上で挙げたような馬鹿みたいなサブタイトルも楽しい部分のひとつで、ミニゲームを選ぶたびに音声サンプリングのタイトルコールが入る。まああんまり何言ってるか判らなかったのも多かったんだけど。
難度も遊ぶ側にしてみれば中々適正だったと思う。最初のうちは難しいと思えるミニゲームもそれなりにこなせるようになっていき、とはいえ気の抜けないミニゲームもいくつかは混じっていて、でも頑張ればワンコインクリアまではまあまあたどり着ける。
ただ、設置する側からすればやや簡単すぎた、のかも知れない。稼働開始から少し経つと、ちょっとやりこんだプレイヤーは1コインでかなり粘り、あるいはクリアするようになっていた。延々と遊べるゲームゆえに、クリアしてからも変わらず遊ぶ人も多かったのではないかと推測する。
そこで登場したのが続編の『イチダントアール』だ。こちらにはモボとロボはもはや登場しないため、ストーリー的なつながりはなくなっているが、ゲーム内容としてはれっきとした続編と言えた。
全4面で、悪漢を追いかけていって部下と対決、という展開は前作と全く同じ。ただし登場するミニゲームはすべて新しいものに入れ替えられ、若干数も増えて 20 種類になっている。そして、ひとつだけ新しいルールが付け加えられていた。「同じミニゲームは1面に1回しか出ない」というものだ。
これは素晴らしいルールだった。『タントアール』では簡単なゲームと難しいゲームがわりとはっきり分かれていて、どうしてもつい簡単なゲームばかり選びがちだったし、結構それだけで最後までクリアできてしまったりもした。タントアールはクリアすると最後にそのゲーム中にクリアしたミニゲームの回数が全部出るのだが、だいたいこれがえらく偏っていて、「またスリーヒントばっかりやってしまったなあ」「やっぱりフォトショックは0回か」などと毎度似たような感想を抱いていた。
それが『イチダントアール』ではこのルールが加わったために、できる限りこなせるゲームを増やさなければならなくなった。1面や2面では殆ど気にならないが、3面では 20 種類中 12 種類だから6割。最後の4面にもなると、20 種類中 16 種類をクリアしなければならない。回避し続けていいゲームは4つだけだ。しかも現実には、選択できるミニゲームは画面上に4つしか出ないのだから、その4つが全部出てしまうこともあり得る。というより、どこかでそうなる可能性の方が多分高い。
さらに、4面の前半と後半ではミニゲームのノルマ数が違い、前半の方がいくぶん楽な設定になっている。つまり、どうせクリアするのなら難しいミニゲームを前半に持ってくる方がいい……のだが、正直おれは4面の後半まで行けるか行けないかというところで力尽きていた。このルールは面白かったけど、いささか難しくなり過ぎていた印象もなくはない。
ちょっと簡単すぎた初代、ちょっと難しすぎた続編、とそれぞれに難はあったものの、実に楽しいゲームだった。ふたり同時プレイも熱くなった。この後も『二度あることはサンドアール』『対戦タントアール サシっす』とシリーズは続いているが、案の定というべきか、難度が高すぎて短命に終わっている。

メモ

  • タントアールの稼働開始年がわからない。wikipedia だと 1991 年となっているのだが、もう少し遅かったような気がしてならない。一応セガの公式サイトで言及されているページから引いて 1993 年としたが、それも合ってるのかどうか……。
  • タントアールでは上にもちょっと書いた通り「フォトショック」が断然難しかった。被写体の速度がけっこう速い上に、ファインダーからちょっとはみ出しているだけでもミスになってしまうからだ。あと「忍者どこじゃ」「ハットしてフラワー」も結構厳しかった。「わくわくロボット工場」は個人的には好きで、10 秒でもあまり死ぬ気はしなかったが、厳しいとみなされていたように記憶している。
  • イチダントアールはとにかく「チキチキ・チキンレース」と「奥様は窓」がどうしようもない難しさで、1面だろうがなんだろうが選ぶ気になれなかった。選ばないから上手くならない、のかも知れないが、それにしても並大抵の動体視力と反射神経では無理だったのではないだろうか。
  • フォロワーの中にはひどいゲームもあったというのは上にも書いたが、中でも特筆すべきは『マルちゃんdeグー!!』であろう。おれはクソゲーという言葉はあんまり好きじゃないしなるべく使わないことにしているのだけど、このゲームに関しては使うことをためらわない。クソゲー。まごうことなきクソゲー。グラフィックは劣悪、ミニゲームの順番が選べない、そもそもミニゲームが全然面白くない、それでいて妙に難しい。これどこが作ったんだろうとずっと気になってたんだけど、セガらしいんだよねどうも。東洋水産が怒らなかったのが不思議でならない。ゲームの出来を考えると、あるいは東洋水産で作っていたのかも知れない。