黄昏通信社跡地処分推進室

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今まで一度も「PC-6001」を遊んだことがない人に、今だからこそ薦める10作

いまさらですけど便乗企画。


http://mubou.seesaa.net/article/418633130.html
今まで一度も「ファミコン」を遊んだことがない人に、今だからこそ薦める10作 -- 不倒城
http://honmaka.blogspot.jp/2015/05/880110.html
今まで一度も「8801」を遊んだことがない人に、今だからこそ薦める10作 -- ホンマカ!改


上の記事が元ネタで、下の記事は同じフォーマットに乗った追随記事。どちらも面白かったので、自分の知っている機種で便乗してみようという次第。
なんとなくレギュレーションは以下のように決まっているらしいので、ここでもそれに沿って書いてみる。

  1. 筆者の趣味
  2. 特に【機種名】の作法や背景を知らなくても楽しめる
  3. 最近のハードで直系の続編、ないしシリーズ作が発売されていない(長寿シリーズ化していない)
  4. 1メーカーにつき1タイトル
  5. 最近のハードで出ていないものなら別に移植ものでも良い

3. については追いきれていないので抵触するものもあるかも知れない。4. の制約はかなり厳しく、どちらかというとゲームを 10 本挙げるというよりもメーカーを 10 社挙げるという感じになってしまったきらいはある。ともあれ、はじめよう。


ちゃこのファイヤーショック/コムパック
雑誌「I/O」のプログラムコンテストの入賞作。工学社の「I/O」は当時は飛ぶ鳥を落とす勢いの雑誌で、コンテストの入選作はソフトウェア部門の子会社であるコムパックからパッケージとして発売されるならわしになっていた。トップビューのアクションゲームで、迷路の中を歩き回ってキーワードの文字を集め、邪魔な敵はパイロキネシス(発火術!)で焼き殺す。ただし敵を焼くと延焼が起こるのと、一匹焼くと二匹現れるので焼き過ぎにはご用心。うじゃうじゃ現れる敵、ぐるんぐるん回る迷路、独特の歩行音、と技術は極めて高く、独創性に溢れた傑作だった。今でも似たようなゲーム見たことないんだよね。めちゃめちゃ難しいのが玉に瑕で、クリアできた人がいたのか疑わしい。
コムパックの他の候補は自機が変形メカの横シュー『ブレイク・スルー』。これもすごく面白い。こっちはまあ普通にクリアできる。
ロードランナー/システムソフト
言わずと知れた不朽の名作。アクションパズルの金字塔であり、ものすごく多くの機種に移植された。グラフィックもシンプルで同時に動くオブジェクトもそう多くないので比較的移植は容易だったのだと思うけど、当時 PC-6001 で他機種と全く遜色なく遊べるゲームというのはそれだけで貴重だった。それに、単純にとても面白い。メモリの都合で一度に 10 面しか持つことができず、全 150 面遊ぼうと思ったら 15 回カセットテープからデータをロードしなきゃいけなかったんだけど、それでもかなり遊んだ記憶はある。さすがに全面クリアはできなかった。142面みたいな半分運ゲーというか作業ゲーみたいな面が結構あって、難しくて無理というよりはくじけてやめる感じだったかな。
システムソフトは他に『野豚の異常な食欲 〜またはいかに私は心配するのをやめて蛸を愛するようになったか』があって、めちゃくちゃ技術力と完成度が高いゲームなんだけど、惜しむらくはあんまり面白くない。
聖なる剣/クリスタルソフト
テキストアドベンチャーの(今の感覚では)怪作。魔王にさらわれたお姫様を助けに行く、極めて王道ストーリーのアドベンチャーなのだが、デストラップの連発と情報把握の難しさでかなりの難度を誇った。PC-6001 版はメモリ容量の都合もあってか極めて描写が切り詰められていて、それがかえってゲームの雰囲気を作っていた。地下に入ってからはいろんなモンスターが出てくるんだけど、モンスターのいる部屋だと「まものの まえに でました!/めいれいは あと 5 かいです」とターン制限がかかるのがすごい緊張感で、あれは上手い演出だった。「このさきは X’TAL SOFT というなの じごくです。」とか、今思うとひどいけど、当時小学生だったので普通に怖かった。FM-8 が家にあった同級生とあそこはどうやれば抜けられたとかあの部屋はなにを持っていけばいいんだろうとか相談しながら進めていたのが懐かしい。クリアできたときは嬉しかったなあ。
ドアドアmkII/エニックス
ドアドアPC-6001 にも移植されている。タイトルからして PC-6001mkII 専用っぽく見えるが、テープの裏面に初代 P6 用のヴァージョンがちゃんと収録されているのだ。移植元の『ドアドア』はチュンソフト中村光一氏の出世作で……みたいな話は流石に省く。オタピョンが登場したのはこの作品が初めてではなかったかな。ファミコンドアドアもどちらかというとこの『mkII』が元ねたになっていたように思う。固定画面のアクションゲームで、敵をドアに閉じ込めてやっつけるシンプルなゲームだけどくそ面白かった。今でも遊んだら面白いと思う。
エニックスは他に『ポートピア連続殺人事件』『オホーツクに消ゆ』。後者は五部構成になってて、一部進むたびにテープからプログラムをロードしてた。すごい大作って感じがしたものだ。
トリックボーイ/T&E ソフト
T&E ソフトは当時 PC-6001 のゲームをばんばんリリースしてたすごいメーカーで、「I/O」によくリストが載ってたと記憶している。当時はゲームソフトのリストが雑誌に全部掲載されることがあって、頑張って打ち込めば遊ぶことができたのです。今思うとどうしてあんなことしていたんだろう。知見を共有するみたいな志があったんだろうか。リバースエンジニアリングっぽい記事も普通の雑誌に平気で載ってた時代ではあったのだけど。さておき、このゲームは固定画面のピンボールで、見た目は地味だけどバランスがよくて面白かった。ある程度は狙って打てるところもよかったし、中央に出てくるポストはめちゃめちゃ太くてフリッパーを下げてると完全に隙間がなくなる、っていう太っ腹ぶりも好きだった。ボーナスステージのフィーチャーが「壁が全部真っ暗になって見えなくなる」だったんだけど、今思うとますます地味になっとるよな。ピンボールゲームというのも転倒的なしろものではある(アナログゲームのシミュレーターなわけだからね)けど、このゲームは楽しかった。
ザ・タンク/ワンダーソフト
ワンダーソフト社については社名も忘れていてぐぐったのだけど、「AX シリーズ」をパクったの向こうを張った「GTX シリーズ」というのをリリースしていた会社、らしい。唯一『GTX2 スペース・ペンギン』というタイトルだけ遊んだことがあって、その中に入っていた一作がこれ。固定画面のシューティングゲームで、自機は完全に包囲されていて、外周にいる敵戦車を全滅されるのが目的。展開は単調ではあるのだが、包囲される状況からスタートするゲームって案外なくて、そこがユニークな面白さだった。敵戦車を倒すとたまに搭乗者が生き残って、たまーに対戦車砲撃ってくるんだけど、それにやられるとむしょうに悔しかった。
高田馬場アドベンチャー/プロシューマ
おそらく表参道/南青山アドベンチャーのパロディとして作られた、コミックテキストアドベンチャー。黎明期のマイコンゲームの香りがする。以前も書いたけどファミコン出た年にこんなもの売ってたのかよっていう。とはいえ結構しっかり作られていて完成度は高いし、なによりエンターテインメント性がものすごく旺盛なのは素晴らしいと思う。全力でプレイヤーを面白がらせようとしてくるんだよね。だから、クリア自体はまあ簡単なんだけど、隅から隅までしゃぶるみたいな感じで何度も遊んだ。「かみさま」コマンドとか、ねたが出尽くすまで打ちこみ続けたなあ。こんなゲームだけど複数の機種で発売されていたらしい。ゲーム開始時の短い曲が超いかしてたのも忘れられない。
スターライトアドベンチャー/キャリーラボ
これも比較的面白寄りのテキストアドベンチャーということにはなろうか。コマンド選択式が浸透してきた頃の、比較的はしりの作品で、東西南北と YES/NO、そして舞台となる8つの惑星をあらわす 1〜8 までの数字だけで進行できるというのが売りだった。これだけでアドベンチャーゲームになるのかというと、案外なるもので、奇妙なユーモアセンスも込みで結構楽しく遊んだ憶えがある。デストラップもそこそこあるので、プレイヤーとしては後半に行くほど選択が保守的になってしまうんだけど、そこを上手く突いた正解の選択肢に妙味があった。しかしこうあらためて書いてみるとアドベンチャーゲームが「正しい単語/行動探し」から「フラグ立て/おつかい」に移行した最初期のゲームということにはなるのか。ちなみに続編の「パート2」も出ていて、そっちは曲がりなりにもグラフィックがあるのが売りだった。しょっちゅう死ぬもんでしょっちゅう(主人公の)骸骨見せられてた記憶がある。
タイニーゼビウス電波新聞社
さしもの電波新聞社も初代 PC-6001 向けにはそんなにゲーム作ってなくて、これは数少ないタイトルのひとつ。かなり簡略化されているとはいえとにかくもあのゼビウスを遊べるってのはすごいインパクトあった。今調べるとコンシューマ/PC への移植は一番早かったらしく、それも印象が強かった原因なのだろう。二段階の難度があって簡単なほうだと慣れればほぼ死ななくなる。難しいほうだと激辛の当たり判定のおかげもあってかなり厳しい。マップがランダムなんだけどある程度の規則性があって、特に最序盤はだいたい決まっているのに、ときどきそれをふっと外れるマップになって何故かテンション上がったのを憶えている。プログラマーは松島徹氏で、作った当時は中学生だった、という話はつとに有名。(だけど発端が無許可で作られた投稿プログラムだった所為もあってか、当時はこの話がおおっぴらに語られることはなかったと記憶している。少なくとも筆者はずっと後年になってから知った。)
オリオン/アスキー
〆はもちろんこのシリーズである。上でも言及したアスキーの「AX シリーズ」はアスキーがリリースしていた PC-6001 向けのパッケージソフトのシリーズで、AX-1〜AX-10 まで発売された*1。2800 円でゲームが2〜4本入っているという価格設定は当時としても破格で、なおかつクオリティも極めて高かった。1メーカー1タイトルの制限がなければこのシリーズから五本ぐらい入ることになると思う。そのぐらい素晴らしいシリーズだった。中でも拡張 RAM カートリッジが必須だった「AX-5 オリオン/クエスト」はシリーズの白眉で、PC-6001 向けに発売されたゲームソフトの中でも最高峰に近いと考えている(とか言えるほど色々遊んでませんが)。2本とも素晴らしいゲームだが個人的にはこの『オリオン』に軍配を上げたい。宇宙空間を戦闘機で飛び回って敵機と撃ち合う 3D シューティングで、単純ながらそのシンプルさゆえに実にはまる。信じられないほど高速の描画で複数の敵が画面内を動き、BGM はないながら「ピーッ」という効果音が時々鳴るだけの音響効果がコックピットの緊迫感をかえってよくあらわしていた。飛んでくる弾が自機に当たりそうになる時には思わず身体をよじって避けずにはいられなかったし、逆にこちらの弾が命中して画面内で音もなく敵機が四散するのはおそろしく気持ちよかった。なにがあれほどの没入感をもたらしていたのか、今遊んでもそこまでのめりこめるものか、ちょっとわからないのだけど、当時としてはとにかくすごいゲームだった。語り継いでいきたい作品である。






というわけで 10 タイトル挙げてみた。タイトル詐欺というか、別に「今だからこそ薦める 10 作」には結果的に全然ならなかったが、まあ今から本当に遊ぶ人も居ないだろうというところではある。いくつかのゲームについては以前書いたことがあるが、いくつかについては初めて書いた。どんなに印象に残っているゲームでも記憶はやはり薄れていくしゆがんでいく。まだなんとか形を保っているうちに記憶や印象を頭の外に出していくことは自分にとっては大事なことだと思っている。という理由もあって冒頭のブログのエントリに便乗してみた。もちろんそれだけではなくて、上のふたつの記事が面白くて楽しかったというのがむしろ最も強い動機だった。このエントリも読んだ人が少しでも楽しんでもらえればうれしく思う。





……とか書いてたら、今週に入ってから似た趣旨の記事が2本ホッテントリ入りしていた。こちらも楽しく読んだので紹介しておく。
http://utakata.hatenablog.jp/entry/2015/07/20/172045
【お題】 僕の人生時間を奪ったゲーム10選 (PC-8801編) -- 泡沫な事柄の記憶
http://fujipon.hatenablog.com/entry/2015/07/22/141331
私撰・ゲーム黎明期を彩った国産マイコンゲーム10選+α(1983ー85) -- いつか電池がきれるまで


個人的で勝手な希望をいうと、もっといろんな機種の記事を読んでみたい。MZ-1500 とか S1 とか、スペックは高かった印象があるんだけど、ゲーム事情的にはどうだったんだろうか。

*1:余談だが、A は多分アクションの A で、姉妹シリーズとしてシミュレーションゲームの SX-1(なんか戦車だか戦車戦だかのゲームだったと思う)やツール?の TX-1(こちらはパターンエディタではなかったかな……)などが発売されていた。