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『宇宙はどこまで行けるか-ロケットエンジンの実力と未来』 小泉宏之著 中央公論新社:中公新書,2018-09

宇宙旅行をする乗り物のための推進装置は、今のところ一種類しかない。ロケットエンジンだ。なにしろ大気がないところを飛ばなければならないのだから、物体を勢いよく投げ捨ててその反動で反対向きに進むしかない。そのシステムをロケットエンジンと呼ぶ。得ることのできる速度は投げ捨てるものの質量と速度に比例する。どちらにも制約はある。乗り物に積める燃料には限りがあるし、投げ捨てる速度も無限に速くはできない。たくさん積むほど重くなって加速の妨げになるし、速くしようとすればするほどエネルギーが要る。
そのようなジレンマの中で、用途に応じて様々なエンジンが作られて使われている。いわゆる一番よく見る宇宙ロケットは地球の重力圏から脱出しなければならないので大出力が必要で、そのために使っている液体燃料ロケットは大きく重くなり、比推力*1はあまり高くない。惑星間、まして恒星間を旅行することを考えると、もっと比推力の高いエンジンを用いなければならない。
ここら辺は定番の話だけれど、具体的な推進手段についていろいろ記述されているのと、あと定量的な話がされているのはよかった。つまり、現在の技術で、この推進方法を使って、このぐらいの大きさでこのぐらいの燃料を積んで、という条件でどこまで行けるか。
個人的にはちょっと目が滑ってしまったというか、あまり自分のコンディションがよくない感じのときに読んでしまったのでちょっともったいなかった。機会と時間があれば読み返したいが、そんな日が来るかどうか。

*1:「推力/(推進剤質量流量・地球の重力加速度)」で表される数値。ものすごくざっくり言えば燃費みたいなもの。