黄昏通信社跡地処分推進室

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『方形の円(偽説・都市生成論)』 ギョルゲ・ササルマン著/住谷春也訳 東京創元社:海外文学セレクション,2019-06

架空の都市にまつわる連作短編。各短編はほとんどショートショートといってもよい短さで、一番短いものは一ページ強しかなかったりする。それぞれの都市についてシンボルマークと通称が設定されていて、たとえば同心円のシンボルと「迷宮市」といった具合に各編の頭に掲げられている。そこから都市に関する直接的な説明が展開されることもあれば、そこを訪れる旅人の視点の記述であったり、遠い未来からの回想で語られた物語がつづられたりする。いくつかは奇妙に印象深く、いくつかは面白いと思うものもあったが、全体の印象としては正直いささか散漫だった。原著は 1970 年代前半に書かれていて、ル・グインが気に入って自ら抄訳の英語版を作ったりしていたとのこと。その辺の事情もあって若干過大評価されているのでは、という感じ。