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『中国・アメリカ 謎SF』 遥控:他著/柴田元幸、小島敬太編集・翻訳 白水社,2021-01-30

中国・アメリカ 謎SF

中国・アメリカ 謎SF

  • 発売日: 2021/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
なんかざっくりしたくくりのアンソロジー。みんな大好き柴田元幸と、小島ケイタニーラブの名前でミュージシャンとしても活躍している小島敬太のふたりが、米国と中国からそれぞれ新進の作家の作品を選んで寄せ集めた作品集なのだが、条件が「日本で未紹介である作家の SF 作品」(ただし柴田いわく「雑誌に一篇載ったぐらいまでは許容する」)ということなのでかなりチャレンジングな企画ではある。で、集まったのが柴田三篇小島四篇。それを交互に並べてこの短編集は編まれている。
冒頭は遥控(ShakeSpace)の「マーおばさん」で、これは 90 年代に書かれたらしく、奇想としかいいようがないアイデアなのだが残念ながら構成が少し悪いように思う。もう少し読者が驚けるような提示のやり方はできたのかなと。ヴァンダナ・シンの「曖昧機械―試験問題」は短い短篇三篇からなる小さなオムニバスで、その三篇をひとつのテーマが貫いている力の入った構成。梁清散「焼肉プラネット」はバカ SF でこういうの今でもあるんだなーという感じ。ブリジェット・チャオ・クラーキン「深海巨大症」は深海にある生き物の探査に向かう潜水艇に乗り込んだ三人の研究者たちをめぐる人間模様を描いた奇妙な話で、閉塞感と猜疑心が渦巻く小さな世界がゆっくり深みに沈んでいく様を描いた手つきはみごと。収録作品の中では一番気になったかな。王諾諾「改良人類」はいわゆる古き良き SF で、藤子・F・不二雄あたりが描いてそうな話、という印象だがわりと好きだったりする。マデリン・キアリン「降下物」はポストアポカリプスとタイムトラベルを組み合わせて“終わる世界”を描いた重苦しい作品だが、たぶんこの感じを愛する人はそれなりにいるものと思う。個人的にはそこまででもなかった。王諾諾のもう一遍「猫が夜中に集まる理由」はタイトル通り夜中の猫集会が開催される理由について並行世界の考え方をベースに描いた作品で、最後に置くものとしてはいいと思う。とはいえわずか七篇(中国だけなら四篇)のなかで同一作者の作品をふたつ選ぶのはいかにもバランスが悪く、ちゃんと選んでるのかよという印象も与えかねないのでこれは避けるべきだったんじゃないかな。
まあまあ面白かったし楽しく読めたけど、さすがに寄せ集め感は否めないかもしれない。総じて柴田の選んだ作品のほうが水準は高いように思われる。