黄昏通信社跡地処分推進室

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山行記録(2日目)

 6:25     出発
 7:11 - 7:21 休憩
 8:09 - 8:19 千丈分岐 休憩
 9:07 - 9:37 休憩・昼食
10:00 -10:10 飛騨乗越
10:25 -10:30 槍岳山荘
10:45 -11:05 槍ヶ岳山頂
11:20 -11:38 槍岳山荘
12:23 -12:33 坊主岩
13:23 -13:33 天狗方面分岐
14:35     槍沢キャンプ地到着

目が覚めたら4時。ひええ寝坊だ。ていうか寝過ぎ。しかもまだまだ雨が降ってる音が。これ以上ないほどテンション下がる。でもまあ止むかも知れないし、ということでのろのろ起き出して寝袋丸めたり朝食の支度をしたり。朝食は例によって雑煮。今年は肉を忘れたので肉なし。そもそも買い忘れていた辺りかなりおかしい。忘れるな。もちを二個半ずつ喰う。
と、明らかに雨の音が弱くなっている。同時に、どんどん周囲が明るくなる。首を出して外をうかがうと、周囲のパーティも出発する気満々で準備しているようだ。これは行けそうだと思えば俄然元気も出ようというもの。しかし起きた直後のもたつきが響いて結局出発は6時過ぎに。昨日の方が早かったかも。出かける頃にはすっかり雨は上がっていて、雨具も着ないで出発した。上空の風は強く、低い位置にある雲は次々に東へ飛んで行く。その隙間からは時折青い空が覗いて、今日の好天を予感させた。
山行はだいたい二日目が一番調子いい。筋肉痛もまだないし、山に泊まれてゆっくり眠って体調もいいからだ。そしておれは朝が一番好きだ。明るくなりきらない空と、静かで冷たい空気。このためにおれは山に来ているんじゃないかと思う。素晴らしい。というわけで重い荷物にも負けずにがしがし登る。途中で木苺を見つける。真赤に熟れてておいしそうだったが食べたりはせず。まあもう30だからなあ。じゃなくて、山のものを迂闊に摘んではいかん。
飛騨谷は風通しがよく、休憩すると身体が冷えるため、休むたびに一枚ずつ厚着になっていった(といってもTシャツ→長袖→雨具までだけど)。時々太陽が覗いてあたたかく照らしてくれるのだが、常に谷底から霧混じりの風がびゅうびゅう吹き上げてきて、かなり寒い。
急にものすごく腹が減ってきて足が動かなくなったので、チョコレートを詰め込んでなんとかしのぎ、次の休憩で昼飯にした。圧縮したロールパン四個半w/いちごジャム+みかん一個一気食い。旨すぎる。そして座っていると寒すぎる。湯を沸かそうかと提案するが兄がまだとっとこうと言うので後の楽しみとする。(結局忘れてしまうのだが)
そこから、高度的にはまだ森林限界には遠いと思うのだが(あとで考えると多分そろそろだったんだと思う)、ガレ場のジグザグ道をえんえんと登る。晴れていれば結構雄大な眺めなんだろうが前述の通り視界はあまりよくない。しかし順調に千丈沢分岐に到着。ここから北に行けば尾根に出るが、まあ予定通り谷を登ることを選択。
がしがし登るととうとう峠に当たる飛騨乗越に出る。ここで風がピークに達する。多分に地形的なものもあったんだろうが、西から吹き上げてくる風が激し過ぎる。ここからは尾根沿いに進まなければならないので、先に進む気になれない。座って風が止むのを待つ。ぼんやりとしかし結構厚くかかった雲に隠れて日は差さない。洟がいい感じに垂れる。と、しばらくすると槍の方から平然と降りてくる人が通りがかる。あれ? 意外と大したことない? そして計ったように風が弱くなり、太陽が顔をのぞかせる。
「行くぞ」兄が宣言。異のあろう筈もなく立ち上がる。実際多少はあおられたが大丈夫だった。尾根を辿って行くとテント場があった。ここに幕営する予定もあったのだが、あまりの吹き晒しぶりに萎える。高度を考えても恐ろしく寒いだろう。それはそれでいいかも知れないが。そして拍子抜けするほど簡単に槍岳山荘に到着する。
さっきまで陽光すら遮られていたのが嘘のように晴れ始めた。なんと素晴らしいタイミングだろう。ちょっと休もうかと行ったのだが、兄は耳も貸さずにすぐ登ろうと言う。これで天気悪くなっても嫌なので荷物を槍岳山荘に置かせてもらって、水と何故か乾パンだけ持っていよいよ穂先へ。
穂先は狭く険しい岩場で、登る人と下る人のルートが分けてある。が、難所には鎖や梯子もついてるのでおれらみたいな素人にも安心。一応三点支持っぽい事を心掛けてみるが、多分あんまり関係なく登れる。油断はしてはいけないのだけど。(小心者なので岩場で油断はしない質。)
15分程度で無事に槍ヶ岳山頂に立つ。噂どおり狭い。精々20人ってとこか。幸い時間帯と曜日と季節の所為か空いていて、少しのんびりすることができた。もの凄く見晴らしがいい。もの凄く。南の方は少し雲があって、残念ながら穂高は見えなかったんだけど、それ以外は全方位視力の許す限り見渡せた。その何処もがおれが今立っている所より低い。ここが世界のてっぺんなんだとしか思えなかった。最高に気分がよかった。写真を撮ったり北鎌尾根を覗き込んだり水を飲んだりした。20分ぐらいは居ただろうか。
下りも問題なく、槍岳小屋に到着する。Tシャツ売ってたので買ってみたりした。胸に一文字「槍」って書いてある奴。いまいち使い途がわからないが。少し長めに休憩。今日は先ほど通過したテント場か、首尾よく山頂に立てた後であれば少し下った殺生ヒュッテそばのテント場に泊まる予定だったのだが、時間にも体力にも余裕があったので、今日のうちに槍沢キャンプ場まで下ってしまおうと決める。
というわけで下り。どんどん人が登ってくる。やっぱりこちらの道の方が人が多い。槍沢の源流に沿って谷沿いに下りる道で、そんなに無茶な段差は多くなく、気持ちよく下れる。しかしそろそろ脚がしんどくなってくる頃合いだ。かつて槍ヶ岳に初めて登った坊主が篭ったという岩の辺りまではよかったが、そこからは疲れる脚に重い荷物がずんと効いてくる。最後の一時間は今回の山行で明らかに一番しんどかった。テント場に着いて文字通り倒れる。体力ねえなあ! 槍沢小屋はそこから20分下ったところにあり、幕営料を払わなければいけないんだけど、兄が行くというので任せてしまった。
最後汗があまり出なかったのと、小便に行きたかったのがいつの間にか収まっていたのとで、おかしいと思い水を飲んでみると、一息で軽く7デシリットルぐらい飲めてしまった。脱水しかけてたようだ。下りだし涼しかったので気付かなかった。
兄が戻って来るまでにテントを立ててしまおうと思ったのだが、ポールが曲げられず諦めて平たいテントの上でふて寝。1時間後に兄がへろへろになって戻ってきてから、テントを立てて飯を喰う。今日はインスタントのスパゲッティとクリームシチュー。鍋が小さいのでスパゲッティを湯に浸すのに苦労したが、結局は上手く出来た。旨かった。
この日は高度差にすると1200メートル登って1200メートル下ったことになる。疲れる筈だ。18時過ぎにバタンQ(死語)。