黄昏通信社跡地処分推進室

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『パターン・レコグニション』 ウィリアム・ギブスン/浅倉久志訳 角川書店,2004 ISBN: 4047914681

ギブスンの新作。もうあんまり期待せずに買ったし、読み終わるのがここまで延びてしまった。電脳三部作ではそれこそ「大文字のEが」見えそうな先端を描いてみせたギブスンは、続く三部作ではそこと現在とのリンクを描くことを意識していたように見える。そしていよいよ描かれる“現在”――なんだけど、どうにもかっこ悪い。原作が刊行されたのは昨年だし、日進月歩の世の中では先端技術があっという間に古びてしまうのも仕方がない。だけどそれにしても、作者の根本的なテクノロジー音痴ぶりがそこかしこに見えてしまっているように感じられるのはおれだけだろうか。そして“保守的な翻訳者”を自称する浅倉久志は、動詞 google を「ぐぐる」と訳すことすらためらってしまった。
物語のシチュエイションは『カウント・ゼロ』のマルリイのパートとかなり似ている。具体的な筋はおくとしても語り直しの印象は否めない。それでも“フッテージ”や主人公の設定など、ギブスンらしさがうかがえる部分はあって、それは総じて楽しい。んだけど。