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『グリュフォンの卵』 マイケル・スワンウィック/小川隆・金子浩・幹遥子訳 ハヤカワ文庫SF,2006 ISBN-13: 978-4150115586

マイケル・スワンウィックといえばおれの中ではウィリアム・ギブスンとの共作である「ドッグファイト」がまず浮かぶ。『クローム襲撃』に収録されている短編で、男というもののろくでもなさ*1となんだかわからないけどかっこいいテクノロジーを存分に描いた破滅型の快作だ。まあ実のところまず浮かぶもなにもそれしか知らなかったので、ちょっと他の作品も読んでみようかと思って手を出してみた次第。
しかし残念ながらそれほどぴんと来なかったというのが正直なところ。表題作「グリュフォンの卵」はわりと好きなシチュエイションなんだけど、ちょっと作中の経過時間の長さに対して焦点が一箇所に合い切ってないという感じで、読後感がぼんやりしていた。結局何がしたかったんだ、と言いたくなる。「スロー・ライフ」は小川一水の「漂った男」似。どっちが先かは調べてないけど、このシチュエイションもわりと好き。
作風は多彩で、どれもそこそこには面白いのだけどどれもそこそこどまりで、器用貧乏という印象を受ける。個人的な評価としては、収録作全部を合わせても「ドッグファイト」一編に及ばない。
収録作品:「ギヌンガガップ」「クロウ」「犬はワンワンといった」「グリュフォンの卵」「世界の縁にて」「スロー・ライフ」「ウォールデン・スリー」「ティラノザウルスのスケルツォ」「死者の声」「時の軍勢」

*1:この書き方マッチョ的でちょっと嫌なんですけど、まあ「ドッグファイト」自体かなりマッチョな話なんすよね。それを好きだというのもはばかられるんすけど、うーん、好きか嫌いかで言うと結構好きで。