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『小説ゼビウス ファードラウトサーガ』 遠藤雅伸 ブッキング,2005 ISBN:4835441850

1984 年。今は亡き「マイコン BASIC マガジン」の付録だった「スーパーソフトマガジン」に、ゼビウスのバックグランドストーリーと称する文章が3回にわたって掲載された。それはこの『ファードラウト』の抄で、当時小学生だったおれは多大な衝撃を受けた。ゼビウスってのはただでさえかっこいいゲームだったのに、そのストーリーもこれまたすっげえクールだったのだ(当時のおれ比)。
その小説が完全な形で双葉社から刊行されたのは記録によると 1991 年。おれは確かにその本を渋谷の旭屋書店で見かけたのだが、悩んだ挙げ句に一回スルーしたら次回にはもう店頭から消えていて、いくつか本屋を巡ったりしても見つけることができず、以後おれは長い長い年月この本を手に取ることはできないままだった。
多分読めなかった分余計に、だと思うのだが、おれはこの小説の舞台設定がとても好きで、その設定を勝手に借りた話をいくつか書いたことがある。そのうちのひとつを旧サイトで公開していたら、ある日突然作者の遠藤雅伸氏から「大変興味深く読みました」という(たった一行だったけど)メールが送られてきて*1、とても驚いたのをよく憶えている。その時はどうリアクションしていいかわからず結局返事も出さずじまいだったのだが、今思えば勿体無いし失礼なことをしたと思う。
2001 年には『ファードラウト』が HTML 化され遠藤氏のサイトに掲載された。おれはそれをたまたま知ったのだが、当時は姉が出かけてる間にPCを借りるというネット環境で、まあいつでも読めるしいいやと思っていたらいつの間にか公開が停止されていた。
今回、復刊ドットコムの活動によって、ようやく、21年の時を経て、おれはこの物語に辿り着くことができた。
はっきり言おう、小説としては明らかに下手で、文章は素人の水準にある。物語もスケールは壮大だが、なにぶん登場する小道具が大がかりで、整合性が取れているとは言い難い。でもとにかくこういう物語を書くんだという意志と、自分が作り上げた世界に対する偏愛に溢れていて、それと実際に形になった『ゼビウス』という名作との組み合わせを考えるとやはり心を動かされるものがある。
あとは、「それ」に 2625 円払えるのかどうか、という話で、それはもうゼビウスってゲームに対する思い入れがどの程度強いかだけによるんじゃないのかな、と。
# これと漫画4冊レジに持って行って 5000 円で足りなかった時はまじで何事かと思ったぞ.

*1:メールが送られてきて:これはおそらく 1999 年頃のこと。高々6年前だけど、当時は現在よりもはるかに WWW は「狭かった」。検索エンジンで「ゼビウス」と入れて検索しても、おそらくまる1日もかからずに一通り目を通せる程度だったのではないかと思う。そこら辺を加味してこのエピソードは読んで頂けると幸い。