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[戦車っぽい戦車]心に残るゲームたち (37):『グロブダー』

■『グロブダー』 ナムコ/アーケード,1984


ゼビウス』『ドルアーガの塔』と立て続けにヒット作を生み出し一躍名を上げた遠藤雅伸氏が次にデザインしたのは、ゼビウスに登場した、言ってみればやられ役の敵車両「グロブダー」を主役にした面クリア型固定画面シューティングゲームだった。


プレイヤーはグロブダーを操作し、敵機を全滅させると1面クリアとなる。このゲームでは面の単位は「バトリング」といって、ハイスコアランキングには「National Battling Association = NBA」のクレジットが出ている。つまり実車を使った競技という体裁になっていて、この辺りはいかにも遠藤氏らしい。


グロブダーの自機は、ようするに戦車だ。でも操作系としては戦車ゲームにしばしば見られる2本レバーやループレバーなどは使っておらず、普通の8方向ジョイスティック1本だけ。なのに動かしているとすごく「戦車動かしてる」という感じがする。
レバーをある方向に入れると、まず自機の砲塔がレバーを入れた方向に向けてぐるっと回転する(そこそこ速い)。砲塔とレバーの向きが一致すると、初めて自機はそちらの方に動き出す。同じ方向に一定時間以上入れ続けると移動速度が上がる。
それだけのことなのに、

  • 止まったまま自由に砲塔だけ回転できる
  • 小回りがきかない
  • 一度走り出すと結構早い

という「戦車っぽさ」(一応書いておくと実際の戦車とは全然ちがうと思う。あくまでお約束としての戦車っぽさ。)を表現できている。もちろん例えば「右に動きながら上に撃つ」みたいなことはできないので、戦車として不十分ではある。でももうそこはばっさり切り捨てている。


実際にゲームをやっていると、これらの特性が実にゲームのルールによく活かされていることがわかる。シューティングゲームなのに、鈍足の戦車では基本的には弾をよけることはできない。狙われづらいところにあらかじめ動くか、シールドを張るか。そして物陰から攻撃したり足を止めてオープンフィールドで戦ったりするためには、砲塔は自機の動きと関係なくかなり自由に回転できなければならない。ルールと操作方法が不可分、まではいかないが、かなり強く結びついている。


独特の操作感覚と、それと噛み合ったゲームシステム。ふんだんに用意された面数を活かした、緩やかながら際限無い難度上昇。さらに種類は少ないが個性的な敵と、敵のアルゴリズムに絶妙に盛り込まれたランダム性。シンプルでセンスのいいグラフィックと、シンプルで硬質な効果音。


たしか遠藤氏本人が、基盤の性能も開発リソースもかなり限られた中で作った作品だ、とどこかで書いていたのを見たことがある。地味なのは否めないし、面数が多すぎるのも商業的にはあまりプラスとはいいがたい。しかし、それにしては驚くほど良くできているゲームなのだ。グロブダーを走らせてビームをばらまいているだけで楽しいし、各面を攻略する面白さもあるし、パターン作りと崩れたときの対処を考える戦略性もある。もともと枚数が出なかったのか、僕がゲームセンターに通いはじめた頃にはまず見ることがなく、レトロゲームとしてもあまり語られることが多いゲームではなかったように思う。実際僕も遊びはじめてからまだ5年半しか経っていない。でもやってみて、こんなに面白いゲームだったかと思ったし、もう少し、いやもっともっと語られていいゲームだと思っている。


その5年半前、このゲームを始めて、ブログにちょこちょこ記録を残していたところ、それを見てコメントをつけてくれる方が居た。かなりグロブダーをやりこまれている方のようで、しばらくの間丁寧にプレイ指南のコメントをつけてくれた。見ず知らずの方にネット越しにアドバイスをいただくのはいわゆる「インターネットのプリミティヴないいところ」で、有難かったし楽しかった。残念ながら僕は優秀な生徒ではなく、グロブダーからも離れてしまい、ある時期以降はその人からコメントをいただくこともなくなってしまったのだけど、好きなゲームがもたらしてくれた縁として懐かしく記憶に残っている。



補遺

あらためて書くと、敵機を全滅させると1面クリア。全 99 面。各面の敵と壁の初期配置は決まっている。壁は自機・弾・敵ふくめて何物も通れないが、弾の飛ぶ方向が 16 方向なのと、後述するフロッサーの弾は曲がってくるので、思わぬところから弾が抜けてくることがある。特に、壁の縁の当たり判定が甘いので、壁同士が角々で接しているとその角の隙間は弾が通過する。わかっていても結構喰らってしまうので厄介だ。


砲塔は 16 方向に向けることができて、ショットボタンを押していると線分状のビームが連続で発射される。砲塔を固定して押しっぱなしにしているとビームがつながって半直線になる。かなり性能は高いが、敵も硬い敵はとことん硬い。


自機はエネルギー+残機制……なのだが、一発でも喰らうと死んでしまう。エネルギーはシールドを張るためのものなのだ。シールドを張ってさえいればグロブダーは無敵になるが、エネルギーはビームを射つ、移動する、シールドを張る、すべての動作で減るのであまり長くは張っていられない。ゲージが青いうちは完全に無敵になるシールドも、ゲージが黄色になると後述する誘爆を防げなくなり、赤になるとシールドは張れずビームすら満足に撃てなくなる。減る動作を行わなければ、エネルギーはゆっくりと自然に回復していく。


敵の種類は多くなく、雑魚戦車のエネミータンク、少し硬いオレンジハイパータンク、かなり硬いイエローハイパータンク、トリッキイな動きでこちらの弾を避けるグリーンフロッサー、グリーンより頻繁に弾を撃つブラウンフロッサー、でかくてあほみたいに硬いけどこいつだけは倒さなくてもクリアになるフォートレス、の6種類。
明示されていないルールだが、各敵は面の開始時は比較的動きが鈍く、時間が経つと速度が上がって弾を撃つ頻度も上がる。また、自機の初期位置は画面中央下部で、集中砲火を受けやすい。したがって、スタート時にできるだけ素早く敵の数を減らしつつ、安全な場所に移動することが重要になる。


敵は倒すと爆発し、少しの間丸く爆風を残す。この爆風にグロブダーが触れると死んでしまうが、敵にも同じようにダメージを与えるのが面白いところ。爆風で敵を倒すと誘爆となり高い得点が入ることもあって、敵を固めてから倒すことは危険だが有効な戦術にもなった。グロブダーもやられた時には爆風を残し、敵を巻き込むことができる。この誘爆で敵を全滅させてもその面をクリアできるのはユニークなシステムだった。




続きに過去のレトロゲームエントリ一覧。
(36) [中二センス満開]:『エイリアン地底魔城』(ハロー・チャレンジャー・ブック3)(1984)

(35-2) [スライディングは最強]:『スプラッターハウス』(1988)(攻略編)

(番外編6) [頭と指先を鍛えよう!]:渋谷会館の思い出

(35-1) [スプラッター一発ぶっぱなせ]:『スプラッターハウス』(1988)(回顧編)

(番外編5) [R-TYPE 7面ボス]

(34) [川が汚れちゃ困るんだよ]:『Dr. トッペル探検隊』(1988)

(33) [タイマン勝負!]:『ギャラクシーファイト』(1983)

(番外編4) [聖地と呼ぶにはあまりにも]

(32-2) [帽子に花を咲かせましょう]:『WIZ』(1985)

(32-1) [手はグーで飛んでくる]:『魔法使いウィズ』(1986)

(31) [長えよ]:『野豚の異常な食欲 またはいかに私は心配するのをやめて蛸を愛するようになったか。』(1984)

(30) [Merry Merry Christmas]:『ザ・グレイトラグタイムショー』(1992)

(29) [ワルシャワ条約機構の悲哀]:『SUPER大戦略』(カードゲーム)(1989)

(28) [半魚人]:『ヘビースマッシュ』(1993)

(27) [キャノンボール]:『ポンピングワールド』(1989)/『スーパーパン』(1990)

(番外編3) [語れるほどは知らないんだけど (1)]:『ラフレーサー』(1990)/『エスケープキッズ』(1991)/『ホットロッド』(1988)

(26) [シャッターチャンス]:『フォトバトール』(2001)

(25) [スパイアンドスパイアンドスパイ]:『シークレットエージェント』(1990?)

(24) [銃と弾丸]:『ガンバレット』(1994)

(23) [たくさんあるぜ]:『タントアール』(1993?)/『イチダントアール』(1994)

(22) [おれたちゃ義賊(まあ、たぶん)]:『ボナンザブラザーズ』(1989)

(21) [文字だけのインベーダー]:『コズミックレボ』(1984)

(20-2) [なつがくればおもいだす]:『超絶倫人ベラボーマン』(1988)(小ねた集)

(20-1) [全力でぶったたけ!]:『超絶倫人ベラボーマン』(1988)

(19-2) [あがけ、最後まで]:『ぺんぎんくんWARS』(1985)(攻略編)

(19-1) [競技の名はドジボール]:『ぺんぎんくんWARS』(1985)(回顧編)

(番外編2) [MTJ 氏のこと]

(18) [おまえはワイドだ]:『オメガファイター』(1989)

(17) [かみさまおねがい]:『高田馬場アドベンチャー』(1983?)

(16) [力を合わせて]:『ゲイングランド』(1988)

(15) [麻雀に似たなにか]:『スーパーリアル麻雀P4』(1992)

(番外編1) [ファミコン版との違いを教えてやる]:『ツインビー』(1985)

(14) [幻のライバル]:『キャメルトライ』(1989)

(13) [Ready Go!]:『プラスアルファ』(1989)

(12) [終わりなきゲーム]:『ギガンテス』(1990)

(11) [追っかけっこ]:『ポリス&ギャング』(1983)

(10) [今度は縦スクロール]:『イメージファイト』(1988)

これより古いバックナンバーは現在再掲載の準備中。