黄昏通信社跡地処分推進室

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『スカイ・クロラ』 押井守監督,2008

森博嗣の同名の小説を原作としたアニメーション。終わりのない“戦争”が続いている近未来(?)の欧州で、戦闘機乗りとして戦いの中にのみ身を置き続ける「キルドレ」たちの日々を描く。
新宿ミラノ1だったのだけど明らかにでかすぎで、水曜日だというのにたぶん三分の一も埋まっていなかった。ていうかまあ今日日どんな映画なら 1000 席埋まるんだって気もするが。
原作をわりと忠実になぞっているし、奇妙に現実味のない世界の雰囲気も絵柄によくあらわれていた。一応現実世界の延長という設定なのに、なにもかもがとことんありそうにない、と感じられて、たぶんそれは原作読んだときもそうだったので意図したものなのだろう。
空戦シーンになると CG がバリバリに使われているのだけど、それ以外のシーンではどちらかといえば普通にセルセルした画質なので観ている方は違和感を覚えざるを得ない。でも世界の「ありそうになさ」やキルドレの焦燥(あるいは諦念)を考えると「ここにこそリアルが宿ってる」ってことなのかも知れない。いやまあリアルってのは現実に近いってことじゃないのでアニメの世界の中で浮いてればそれはリアルではないんだけど現実に観客はあの空戦を観れば多分おおっとは思うだろうからして。
全体としてはわりとテンション低く進んで行くので三ツ矢の長台詞を唐突に感じたりもしたのだけど、原作読んでない人はあれぐらいは言ってもらわないとほんとになにがなんだかわからないかも知れない。クライマックスのシーンは切迫感があってとてもよかった。静かに積み上げられて来たものが(ふたたび)崩されそうになる瞬間の動き、そして函南のせりふ。
というわけでなかなか楽しめたけど、映像ならではの凄みがそこまでは感じられなかったので(空戦シーンは凄いのかも知れないが、ある程度見る側にリテラシを要求する類の凄さだったように思う)、そこは不満というかどうなんだろうという感じはあったかな。
余談だが谷原章介は想像していたよりずっとよかった。おどろいた。