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ベネッセ・コーポレーション社情報漏洩問題雑感。

ベネッセコーポレーションにおける個人情報漏えいに関するお知らせとお詫び


情報漏洩そのものについてはまだ全貌が明らかになっていないのでコメントが難しいけど、どうやらデータベースの管理は子会社に委託していて、その子会社からの再委託先の従業員が持ち出した、というようなことらしい。もちろん持ち出した人が一番悪いのだが、大量の個人情報を管理する者としてベネッセ社の管理体制が充分であったかというと多分そんなことはなさそうではある。
そしてそれを利用してしまったジャストシステム社の方は、法的には問題なさそうということらしいのだけど、やはり聞いていていい気はしないし対応もあまりよろしくなかった。


本日の一部報道につきまして -- ジャストシステム
これが初動。これは特によくなかったと思う。翌日のはいくぶんまし。


ベネッセ顧客情報漏洩とジャストシステムDM送付について個人情報保護法等の側面から考えてみる -- 散歩くらいしか趣味がない(旧・パキシル飲んで吹き出物)
ベネッセ流出データを使ったジャストシステムは、何が問題だったのか -- Cloud Penguins
不正競争防止法の観点からジャストシステムの責任を考える -- 栗原潔のIT弁理士日記


この辺りのエントリを読んでいると個人情報保護法も多くの法律がそうであるように一般的な感覚から乖離しているところが多々あるようだし、おそらく期待しているほど有効には働いてくれない。特に情報がひとたび第三者に渡ってしまった後はあまりなにもしてくれそうにない。自分の情報は自分で守るしかないのだなと思う。*1


僕と妻は早期教育をあまり重要だと思っていなくて、教材系のダイレクトメールがばんばん届くのもわずらわしいので、「非しま三原則」(しまじろうを持たない、作らない、持ち込ませない)を設定してベネッセ社には個人情報を渡さないようにしてきた。おかげで今回の件はなんとか関係なくすみそうなのだが、別にこれあるを予期していたわけではない。ただ、こういうリスクを目の当たりにしてしまうとますますベネッセ社には情報を渡したくないという気にはなる。




なにより本件でもやもやしたのは、やはりこの手の個人情報はお金になるのだなと再認識させられたことだ。そして多分世の中の多くの人はその価値を認識せずに差し出してしまっているということだ。


ベネッセ社が博物館や動物園などで行っているスタンプラリーという名の個人情報集めは、もう何年もやっているためもあってかなかなかよくできている。まず入口近くのブースで台紙を渡される。それを持って館内/場内をめぐってスタンプを集めたりクイズに答えたりする。最後にそれを景品引き換えブースに持って行くとペーパークラフトとか、ちょっと気は利いてるけど大したことのないものがもらえる。ここで、アンケートにご協力ください、と来る。台紙に住所氏名を書いて提出すれば、豪華なプレゼントが当たるチャンスがあります。プレゼントは書いてくれた住所に送ります。


いや、もちろんいいのだ。台紙にはちゃんと個人情報の使い道とか必要な情報は全部書いてあって、みんなそれを承知で自分から住所氏名を差し出している。報道によれば名簿屋でやりとりされる際にも1件あたり 15 円とかだという。それならプレゼントに応募できる方が嬉しいし、ダイレクトメールなんて要らなかったら捨てればいいんだもの。そういう考えの人も多分相当数居るのだろう。


だけど僕は、ベネッセ社が、個人情報に対する本人たちと業界側の価値認識の非対称性をうまく利用して、個人情報をごっそりかき集めている、という印象をどうしても拭い去れない。あなたたちにとっては大したものじゃないでしょうけど私たちにとっては宝物なんです、なんてわざわざ言ったりしないだろうこともわかるけれど、じゃあたとえば何故最初からアンケートにせずにスタンプラリーで引きずりこんでおいてから最後にアンケートを持ってくるのだろう。何故プレゼントの送付先みたいな体で住所氏名を書かせるのだろう? 


そんなようなことを思っているから、被害者の筈のベネッセ社に対して、僕はどうしても同情する気持ちが湧いてこない。そしてそれは僕の偏見の反映だ。僕には関係のない話なのだから、同情するもしないもない、はずなのだけど。





以下、関連して読んだエントリの中で面白かったものをいくつか。
ベネッセが埋めた名簿屋のミッシング・ピース -- 雑種路線でいこう
.@HiromitsuTakagi 氏によるベネッセコーポレーション個人情報流出及びその関連案件についての見解 - Togetterまとめ
個人情報の大量漏えい事件で見覚えのある光景 -- 情報公開にまつわる日々の出来事−情報公開クリアリングハウス理事長日誌
これは個人情報保護法前夜の様子が書かれていて面白かった。これを読めば、個人情報保護法自体には大いに意義があったのだということははっきりわかる。


追記。
ベネッセ個人情報漏洩事件所感 -- .Nat Zone - Identity, Privacy and Music
これはよくまとまっていて面白かった。子供の個人情報については同意。取得禁止にしてもいいのではないか。
データ持ち出しを助長する名簿転売の抑止が肝要 -- 雑種路線でいこう
正論で、方向性としてはこうあるべきと思う。ただ、今の法律が名簿屋というものの存在を肯定する形で作られているようには見えて、そこを変えられるかどうかがちょっとわからない。

*1:いちおう書いておくと、僕は自分の情報を守ることにそれほど熱心ではない。というかまあ、無頓着なほうだと思う。