『ファミリースタジアム』シリーズのごく初期の作品に実装されていた、ひとつとても好きだった演出をふと思い出したので書いておく。知る限り『ファミリースタジアム '87』にはあって、『'88』にはもしかするともうなかったのではないかと思う。
打者が放った打球がスタンドインしてホームランになると、走者はゆっくり塁を回り、スタンドの観客が沸く――つまり、観客席が明滅し、PSG のノイズで表現される歓声が出力される。おれが好きだった演出はそのあとで、次の打者が最初にバットでボールをとらえると、それがどんな打球であっても一瞬観客が「沸く」のだ。たったそれだけのことなのだけど、興奮冷めやらぬ球場の空気が伝わってくる気の利いた演出だった。
おれが考える、ゲームにおける「いい演出」というのはこのようなもので、あまりリソースを使わずにちょっとした工夫で効果をあげているものに心ひかれる。もちろん、ふんだんにリソースを注ぎ込んで贅沢に作った気合の入った演出というのはそれはそれでよいものだと思うのだが、こういうものの方がより心に残る。それは多分おれがまだ表現が貧弱だった頃のゲームと共に育ったことと関係があって、ノスタルジアに近い感情なのだろう。