黄昏通信社跡地処分推進室

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東山魁夷展於国立新美術館

なんとなく休み。というわけで妻とおでかけする。国立新美術館にて『東山魁夷展』。日本画の大御所、ということと、なんとなくぼやっとした山とか道とかを描く人、ぐらいの印象しか持っていなかったけど、これが実物を見ると全然違う。
現実の風景ってのは実物なのでありとあらゆるところまで作りこまれている。どんな細部だって目を凝らせば存在している。けれど、おれたちの眼は必ずしも常に細部まで捉えているわけじゃないし、ましてある風景を目にしている瞬間に細部まで認識できているのはごく限られた範囲でしかない。その捉え方を画面にどう反映させるかが風景画における技法であり表現だ。
それで、東山魁夷の絵は一見抽象度が高い。ぼやっとして見える。だけど、絵にもよるけど、多くの絵は実際には細部までかなり描き込まれている。もちろん現実の風景とはちがうわけだが、確かによく見ると細部が見えてくるように描かれている。その感じがすごく面白いし気持ちよくて、なにより没入感がある。風景を見る体験が絵に閉じ込められているって感じなんだよね。その感覚を味わえたのがとてもよかった。だから現物を見ないと大部分の体験はこぼれ落ちてしまうと思う。
その点では「道」はそこまでの没入感ではない感じ。会場でそれを強く感じたのは「松庭」だった。松の葉が一本一本描かれていると気付いた時にああっ、と思った。あと、夕暮れの山を逆光で描いている絵が何枚かあるんだけど、その影の中のわずかな明暗がすごくて、わずかな光から木の形も尾根の形も目に浮かんでくる。そういう描写力が卓越している。
あと、全然知らなかったけど、ヨーロッパを描いた絵も結構あって、それがまたいいんだよね。風景と技法のミスマッチみたいなのがかえっていい味になっているというか。
晩年はわりと現実の風景にこだわらずに好きなモチーフを描いてたみたいで、楽しそうに描けているのがよかった。木の枝とか、水面とか、たぶん好きだったんだろうと思う。最後まで細部を描く力があまり衰えていないのには舌を巻く。思わず、みたいな感じで金とか銀とか散らしてる絵もあって、そういうのもよかった。
12-03 までなので、残念ながらこれを書いている時点ではもう終わっている。



終わってから六本木一丁目まで行ってお昼。ちょっといいハンバーグをいただいた。スマッホ買ったときに期間限定のdポイントがついてもうすぐ失効だったんだよね。というわけで実質無料でした。スマッホそのものも 648 円だったしな……。これはねえ、でもほんとにおいしかったです。
さらに時間があったので乃木坂駅のほうから青山墓地に出て、外苑前のいちょう並木まで。青山墓地は人気がなくて、でもこういっちゃなんだけどいい雰囲気のところだった。紅葉もすごく綺麗で。いちょう並木はうって変わってかなりの人出で、みんな思い思いにインスタグラムにあげる写真を撮っていた。落ち葉を集めて持って振りまいて写真を撮る、っていうのをあっちこっちでやってたのが面白かった。
ともあれなかなか楽しいお出かけでした。