物語は約 40 年前からはじまる。ふたりいる主人公のひとりである葉文潔(イェ・ウェンジエ)は大学院生だったころ文化大革命によって父親を目の前で惨殺され、苦難の人生を歩むことになる。強制労働を経た後物理学者となったが、人里離れた秘密基地に配属されて謎めいた任務に従事させられる。心の奥底に人類に対する深い絶望を抱いていた彼女は、やがてある技術を用いて地球外へ地球人類に関する情報を送り出し始める。
時代は下って現在、もうひとりの主人公であるナノマテリアル技術者汪淼(ワン・ミャオ)はある会議に招かれる。軍や警察も絡んだその会議で、汪はにわかには信じがたい話を聞かされる。トップクラスの科学者の自殺が相次いでいて、それにある組織が関係しているようだというのだ。汪はその組織に潜入することとなり、自分の身体にさらに信じがたい現象が起きるのを体感することになる。
「三体」というタイトルは科学者たちの間で流行している VR ゲームのタイトルだ。プレイヤーはゲーム内で地球とは全く異なる環境の惑星で暮らす異星人となって文明の発展を目指すのだが、その惑星の日周や年周は極めて不規則で、比較的安定した気候が続くこともあれば、灼熱や極寒が突然訪れることもあり、文明は何度も滅びてしまう。どこの誰が作ったゲームかわからないのに出来は極めてよく、高品質の VR と謎めいた設定に多くの科学者がのめりこんでいるが、このゲームと自殺現象がどうやら関係あるらしいということを汪は知る。そしてその裏にあるとある文明との接触が、今まさに地球の命運を変えようとしているのだ。
……とまあ、だいぶはしょったのでなんだかわからん感想になってしまっているけど、そんな感じの大風呂敷 SF だ。ぱっとどんな話と言えないのがもどかしいが、それこそが魅力でもあるとは言えると思う。単行本でそれなりのページ数があるがそれでもちょうど動き始めたという感じのところで、今後が楽しみ。