『半分世界』の著者の連作短編集。短編というよりは
ショートショートと言っていい長さのものも多いかな。冒頭にはホテル・
アルカディアにまつわる逸話が付されていて、そこに集う芸術家たちが語る物語という体裁になっている。ちゃんと読めばもしかするとどの物語を誰が語っているかわかったりするのかもしれないが、すみません、そこまできちんと読めませんでした。あとは各章がぼんやりとしたテーマごとにわかれていて、章の冒頭に「性のアトラス」「都市のアトラス」といったタイトルの、テーマを示す
ショートショートが置かれており、全体として作中世界の案内図となるアトラスを形成するという趣向になっている。その趣向がどこまで機能しているかはなんとも……という感じだが、収録されている
ショートショートはかなり面白い。ありえなさそうな設定で奇妙にリリカルな「
タイピスト<I>」、ポップでキャジュアルなゾンビもの「ゾンビのすすめ」、シュールな冒頭から意外な展開に突き進む「本の挿絵」など、作風も多彩だ。ところどころに他の作品や冒頭の挿話の内容がうっすら反映されているような設定や用語、登場人物がいたりするのも面白い(これは『鏡の中の鏡』っぽいかなともちょっと思った)。また他の作品も読んでみようかなと思った。