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飛行船Ⅱ

みんはやで飛行船クイズを出題した。飛行船に関する本を地元の図書館で八冊ばかり借りてきてそれをざざざと読んで時系列順に問題を錬成する――という方法でやったのだがこれは中々楽しかった。飛行船については知っているようでなかなか知らない。気球→原始飛行船→軟式飛行船→準硬式飛行船/硬式飛行船→軟式飛行船という流れや、その途中での軍事利用、そしてヒンデンブルク号の悲劇があってそれ以後は現在まで細々と続いているに過ぎないという歴史もあらためてさらい直すと面白かった。
ケン・リュウの「『輸送年報』より「長距離貨物輸送飛行船」 : 〈パシフィック・マンスリー〉誌二〇〇九年五月号掲載」は今世紀における飛行船の未来を描いていて、読んだことはあったがあらためて読んでみてやっぱり面白くケン・リュウさすがだなというところ。……なんだが、飛行船の楽観的な未来像というのは昨今のヘリウム不足で全部打ち消されてしまうのでそれが本当に切ない。誰の所為でもないし、どうせもともとあり得なかったような未来なのだから、とは思うものの、あり得ないと思っていた未来が来るのが世界というものだし、それを提示できるかもしれないのがSFのいいところだ。それを断ち切るような現実というのは中々辛いものだよなあと思う。
あと田中芳樹の『晴れた空から突然に…』を今回再読してみたが、うーん……という感じだった。豪華飛行客船と、その船上の不穏な空気というシチュエイションまではすごくいいのだが、主人公ふたりの組み合わせがそれに対応できるようになってないのだよな。だから中盤以降は日記はほとんどなにもできないし、一方で俊介はご都合主義的にどんどん敵をやっつけてしまう。まあ雑誌連載だったというし書かれた当時は作者も忙しかったのだろうから練っている暇がなかったのだろうけど、正直できはたいして良くないと思う。続編が書かれなかったのもむべなるかな。

  • 主人公二人の組み合わせは『夏の魔術』に似ている。単に好きな組み合わせなのか、あるいはある種スターシステム的に別の世界でも活躍させたかったのか。あっちは怪異ものなので少女の活躍する余地があったが、こっちは衆人環境の飛行船内、しかも一応科学が支配する世界で相手がテロリストとモンスターなんだよね。それは無理だよな。ここら辺も時間なくて忙しい中無理矢理連載やったんだろうなーという雰囲気が垣間見える。