野崎まどのデビュー作。けっこう前にブックオフで買ってずーーーーっと積読になってたのだが、このところちょっと本読みたいなという感じになっているので引っ張り出してきて読んでみた。主人公二見遭一は芸術大学に在籍する大学生。あるきっかけで自主製作映画に役者として参加することになるが、その脚本を書いた人物は天才とうわさされる最原最早だった。遭一は半信半疑ながら最原の書いたコンテを読み始めると、文字通り没頭してまる二日以上それを読み続けてしまう。一体何をどうするとこんなコンテが書けるのか。遭一は映画を作りながら最原最早という人物その人の謎に迫っていく。
<以下ややネタバレ>
あるメディアを使って脳をハックしようというのはまあSFでは比較的昔から手を変え品を変え使われてきた手法ではあると言える。現実にも「サブリミナル効果」という、まことしやかに語り継がれてきた伝説の広告手法*1があったりして(あれはどうも根拠がないらしいというのが近年の通説っぽい)、SFの題材としてはまこと都合がいい。
というわけでそこに踏み込んでくるのだが、終盤の展開は予想を超えてくる。序盤、そもそも曹一が映画製作にスカウトされた経緯からしておやっと思うところがあるのだが、まさかそれがこうつながってくるとは。単純に面白かったし、なかなかにぞくっと来るところもあった。ここから『2』に至る著者の初期作品六作は大きな連作を成していて、順番に読むとめっちゃ面白いそうだ。まずは一歩目を踏み出せたので、ここから順に読んでいきたい。