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オリンピックねた

あんまりオリンピック見てなくて、せいぜいわりといい時間にやってる柔道ぐらいなのだが、ここまでで印象的な試合がふたつあった。
ひとつは女子52キロ級の3位決定戦。準決勝で横沢に4分59秒まさかの逆転一本負けを喫した「女王」サボンがここにまわっていたのだが、格下(推定)の相手が腰を引いて逃げるのに1分以上圧力をかけ続けて、最後は巴投げ一発で仕留めた。まともに出した技はそれが最初だった。試合が終わってからも笑顔はなく、勝者として自分の名が呼ばれる時も当たり前のように立って居た。それが、畳から下りた途端にコーチにもたれ掛かって泣きに泣いていた。30歳、これまで五輪では銅メダル二つだけ、どうしても欲しかった金メダル最後のチャンスを、自分の油断で落としてしまった、そんな時に戦わなければならない3位決定戦。殆ど残酷とすら言えるシチュエイションだと思う。だけど、背筋を伸ばして傲然と立つ姿は、ほんとうにかっこよかった。
もうひとつは男子81キロ級の3位決定戦。ロシアのノソフは、準決勝でギリシャのイリアデスに背負い投げを喰らった時に左腕を畳についてしまい、その後押さえ込みを受けている途中で痛みのため棄権し、担架で運び出されていた。にも関わらず銅メダルを取りにここに出てきた。だが左腕は殆ど使えない。前半は相手のアゼルバイジャン人(名前失念)に有効と効果を立て続けに奪われてしまう。しかしノソフは前に出続ける。たった一回チャンスが来れば、左腕を使ってでも決める心算なのだ。ちょうど試合時間の半分が過ぎた頃、そのチャンスが来る。ノソフは痛む左腕も使って全力で相手を担ぎ上げて裏返そうとする。相手が背中から落ちたように見えた。判定は――技あり。逆転だが、ノソフは痛恨の表情で天を仰いだ。左腕まで使って、決めることが出来なかった。2回反則を取られれば逆転されてしまう、わずかなリード。しかしそれでもノソフは前に出続ける。結局最後まで闘争心を失わなかったノソフが銅メダルを獲得した。
痛みに耐えて、ってのはそもそもあんまりいいことじゃないと思うし、安易に感動をあおられがちなものでもあると思う。対戦相手もやりづらい筈だし。それでも、ノソフの精神力の強さには心底頭が下がった。いい試合だった。